パパが飲んだビールシリーズM
醸造:ピルゼン(チェコ共和国)
アクセス:ワシントン界隈では、どこでも入手可能。
“Urquell means ‘original source’ in German. And in 1842, Pilsner Urquell did indeed
start it all by brewing the first, and by many accounts the best, pilsner in
the world. Its flowery hop aroma
and balanced, complex character are completely deserving of accolades, as is
the clean, crisp mouthfeel. A
complementary floral aspect in the taste and a memorable, well-calibrated hoppy
presence round out this truly classic beer. From the tap or in the bottle, Pilsner Urquell is truly
first-rate.” (365 Bottles of Beer for the Year 2002)
ひとこと:10年ほど前のことになるが、当時一世を風靡していたアメリカのミステリー作家ロバート・パーカーの「私立探偵スペンサー・シリーズ」にかなり入れ込んでいた時期がある。僕は「スペンサー」シリーズに凝っていて、パーカーが「スペンサー」シリーズから脱却を図り始めた90年代末以降、あまり読まなくなったが、それでも25作目くらいまでは発売と同時に読んでいた。そこまでシリーズが続くとシャーロック・ホームズに「シャーロキアン」がいるように、スペンサーにも同様のオタクがいても不思議ではなく、元プロボクサーにしてグルメ、料理が上手で恋人スーザンと多くの時間を割くスペンサーも、どの作品のどの場面でどんな食事を取ったか、どんな酒を飲んだかなどをこと細かく調べた解説書が出ている。東理夫・馬場啓一著「スペンサーの料理」(昭和60年、早川書房)である。東・馬場両氏は、その著書の中でビールについても詳細に調査を重ねている。その中で、このチェコビールを以下のように紹介している。
・・・彼女(スーザン)の方がことビールに関する限り、なんだか趣味が良さそうに思えてならない。そのことは9作目の『儀式』で、スーザンがピルズナァ・ウーアクウェルを買っていることからも推測できる。このチェコスロバキアのピルゼン・ビールは、ポケット・ガイドで星五つ、グルメ・ガイドで星四つの高評価を受けていて、スペンサーは飲みながら、「金持ちの愛人でもいるのか?」と聞く。「あなたが飲みたがるんじゃないかと思ったの」とけなげなスーザンに、「うまい」と答えながらもこのグルメにしてグルマンの探偵は、金持ちの愛人がいなくとも買えるのに飲み続けようとしない。その代わりにというにはあまりにもドメスティックな、ロリング・ロック・イクストラ・ペイルに走るのである。特に、『儀式』では、最高得点のウーアクウェルを飲ましてもらったにもかかわらず、当のスーザンに、「ロリング・ロックと鴨とキミさえあれば・・・」とぬけぬけと言っている。(中略)ペンシルバニア産のこのロリング・ロックがグルメ・ガイドで星一つという低い得点であることを考えると、はたしてスペンサーはビールがわかっているのか、自然と首が傾いてくる。(198頁)
ここでのポイントは、スペンサー(つまり著者のパーカー)と、東・馬場両氏(つまりは客観基準としてのビールガイド)とは、ビールの趣味が異なるということである。つまり、ビールの評価とは主観的なものなのである。とはいえ、僕はこのウーアケルもローリング・ロックもアメリカで飲んでみたけれど、個人的にはウーアケルの方が好きだ。いや、はっきり言って相当にオススメのビールである。ウーアケルがナンバーワンかどうかは別としても、チェコビールには外れがないような気がする。