パパが飲んだビールシリーズ51

 

Lone Star

 

 


醸造:テキサス州サンアントニオ

 

アクセス:

ソフトリカーの量販店「トータル・ワイン」でのみ入手可能

 

寸評:

Lone Star Lager

“Traditional crisp, common-beer mouthfeel; a workingman’s brew with minimal body; fresh-tasting and to the point; a beer you could drink a lot of, but wouldn’t necessarily write home about; “The National Beer of Texas”; Silver Medal winner at the 1993 Great American Beer Festival and Bronze Medal winner at the 1994.  Pour with down-home dishes such as chicken-fried steak with mashed potatoes and black-eyed peas.” (The Beer Lover’s Rating Guide)

 

ひとこと:

2002年後半から、アメリカの暴走が目立つようになってきた。巷では今、国連決議なしのイラク単独攻撃が議論されている。アメリカも20万人もの軍隊を中東に送り込んでいるわけだから、これで国際世論に負けて撤兵なんて話になったら、国務長官はおろか大統領の責任問題にすらなるだろう。振り上げた拳をただで下ろす訳にはいかないのが今のアメリカだ。そんなことは頭ではわかっている。ただ、独裁者やその取り巻きと、罪もない一般庶民を区別して先制攻撃を加えることなど、本当にできるのだろうか。国際政治の現実など、頭ではわかっているが、なんとなく認めたくないというのが今の心境だ。

 

「ローン・スター」は、ボブ・クラインの格付ガイドで3.1という比較的良好な評価を得ている。ラガーでこの評点というのは決して悪くはない。同じような気候風土であるメキシコのビールが総じて低評価であることを考えると、このテキサス産ビールの評価は相当に高いと言える。確かに、メキシコのビールと比べて、若干ながら味は濃い目かなという感じはする。何杯も飲めてしまうタイプのビールだが、美味しくないわけではない。ただ、なんとなく認めたくないのである。

 

このようなご時世、「ローン・スター」などといかにもテキサス産ビールですというネーミングがなんとなく気に入らない。まるでテキサス訛りの強い英語でカウボーイ気取りの勧善懲悪ドラマを演じているどこかの国の大統領みたいだ。テキサス出身者を人事でも優遇し、「テキサス人にあらずば人にあらず」といった風情だ。「ローン・スター・ステート」というニックネームからもわかる通り、テキサス州は元々独立色が強い州で、テキサス人「テキサン」はそれにプライドも持っているのだろうけれど、そんな調子で国際政治の舞台でも演じられたら、心情的にすんなりとは認められない。

 

昔はそれでも憧れていた時期があった。ぼくが18年前にアメリカに留学に来て、初めて観光らしい観光をしたのは、「ローン・スター」のお膝元であるテキサス州サンアントニオである。サンアントニオは同州の中でも最も観光資源に恵まれた都市であり、ダウンタウンを流れる小川「パセオ・デル・リオ」は、熱風吹きすさぶ西部の荒野の中に突然出現した水の都ベニスといった風情で、週末ともなると、そのリバーサイドでは、西部のカントリー音楽のバンドが生演奏を披露し、観客は野外音楽場の芝生席に腰を下ろして、ファヒータやタコスといったメキシカン料理をほおばる。そして、そこで野外販売されている生ビールといったら、「ローン・スター」なのである。多分、そういうTPOには非常にマッチするビールなのだろう。ぼくは、サンアントニオが好きで、過去3回訪れている。サンアントニオに行けば、「ローン・スター」を注文するだろう。

 

でも、いくらワシントン周辺でも入手可能だからといって、この辺りで「ローン・スター」はちょっと嫌みったらしい。テキサス出身の大統領に対するささやかなるレジスタンスとして、ぼくは「ローン・スター」をあまり薦めないようにしたいと思う。

 

2003年3月9日)

 

ローン・スターのウェブサイトはこちら