-2003年8月アリゾナ家族旅行記-
はじめに
2003年8月3日から13日にかけて、ボクたち山田ファミリーは、家族出発前の最後の家族旅行として、アリゾナ州グランドキャニオン、モニュメントバレー、セドナ、ツーソンなどを巡る旅に出かけた。日本の小学校の教科書や図書館の事典などで目にするかもしれない景色を実際に見せておこうと考えたからである。
アリゾナ旅行のそもそもの経緯は、美澄ママが最初に行きたかったカナダの情報を集めるために訪れたAAA(全米自動車連盟)のオフィスで、「グランドキャニオン鉄道」の2泊3日ツアーを見かけたことがきっかけだった。ママは一度住んだことがあるカナダには土地勘があったけれど、子供のためのアトラクションがどうしても考え付かなくてカナダ旅行を準備すべきかどうかをちょっと悩んでいた。そこにAAAのツアーが飛び込んできた。家で相談を受けたボクも、子供のアトラクションがないカナダには少し躊躇があったので、アリゾナだったらグランドキャニオンを見せて、アリゾナ大隕石孔とローレル天文台を見せておけば、子供達の後々の知的財産にはなると思った(調べてみたら、アリゾナには「グランドキャニオン鉄道」以外にも大西部の自然の中を走る列車ツアーで面白そうなのがもう1つあった。これにボクの長年の夢だったモニュメントバレーも組み合わせれば、そこそこの旅程が組めると思った。だから、目的地をカナダからアリゾナに変更するのには賛成だった。
真夏のアリゾナといえば、気温華氏110度とアメリカで最も熱い地域である。乾燥していて日陰は比較的涼しいし、グランドキャニオンやモニュメントバレーがある州北部は松林が多い高原地帯もあり、日中の最高気温も異常に高いというわけではない。朝は寒いくらいだ。そんな土地にはその土地のビールがとても合うと思う。だから、この旅の間はアリゾナビールを徹底的に堪能しようと思った。
《目次》 *クリックするとジャンプできます。
8月4日(月) フラッグスタッフ⇒アリゾナ大隕石孔⇒ローウェル天文台⇒ウィリアムズ
8月5日(火) ウィリアムズ⇒グランドキャニオン⇒ウィリアムズ
8月6日(水) ウィリアムズ⇒グランドキャニオン(イーストリム)⇒カイエンタ
8月7日(木) カイエンタ⇒モニュメントバレー(ユタ州)⇒キャニオン・デ・シェイ(チンレィ)⇒カイエンタ
8月8日(金) カイエンタ⇒ナバホ・ナショナルモニュメント⇒フラッグスタッフ⇒セドナ
8月9日(土) セドナ市内⇒ヴェルデキャニオン鉄道(クラークデール)⇒セドナ
8月12日(火) ツーソン⇒バイオスフィア2(オラクル)⇒フェニックス
旅に出る前の準備として、「365 Bottles of Beer for the Year
2003」と「The Beer Lover’s Rating
Guide」を元にして、次の表を作成し、旅に携行することにした。
地名 |
銘柄 |
ビール名 |
種別 |
ケイブ・クリーク |
Crazy Ed's |
Original Chili Beer |
ラガー |
ケイブ・クリーク |
Crazy Ed's |
|
ラガー |
フラッグスタッフ |
Mogollon |
Superstition Pale Ale |
エール |
フラッグスタッフ |
Mogollon |
Wapiti Amber Ale |
エール |
グレンデール |
Cougan's |
Marzen |
メルツェン |
グレンデール |
Cougan's |
Porter |
ポーター |
フェニックス |
Ballyard |
Brown Ale |
エール |
フェニックス |
|
IPA |
エール |
フェニックス |
Tommyknocker |
Ornery Amber Lager |
ラガー |
スコッツデール |
Hops |
Amber Ale |
エール |
スコッツデール |
Hops |
Bock |
ボック |
スコッツデール |
Hops |
Pilsner |
ピルゼン |
スコッツデール |
Hops |
Wheat |
小麦 |
テンピ |
Bandersnatch |
Big Horn Premium Ale |
エール |
テンピ |
Bandersnatch |
Milk Stout |
スタウト |
テンピ |
Bandersnatch |
Pale Ale |
エール |
テンピ |
Four Peaks |
Scottish Amber Ale |
エール |
テンピ |
Four Peaks |
Kiltlifter Scottish-Style Ale |
エール |
テンピ |
Gordon Biersch |
Winterbock |
ボック |
テンピ |
Rio |
Deluge Alt Bier Amber Ale |
エール |
テンピ |
Uptown |
Claymore Scottish Ale |
エール |
テンピ |
Uptown |
IPA |
エール |
ツーソン |
Gentle Ben's |
Copperhead Ale |
エール |
ツーソン |
Gentle Ben's |
MacBlane's Oatmeal Stout |
スタウト |
ツーソン |
Gentle Ben's |
Red Cat Amber |
エール |
ツーソン |
Gentle Ben's |
TJ's Raspberry |
エール |
ツーソン |
Nimbus |
Pale Ale |
エール |
ヴェイル |
|
Porter |
ポーター |
この表の他にも、アリゾナ州内のマイクロ・ブルーの所在地一覧表が次のウェブサイトから閲覧可能なので、念のためにプリントアウトして持って行くことにした。URLはhttp://www.beer-lover.com/database/Arizona.htmである。
ボルチモア・ワシントン空港から一路フェニックスに飛び、そこからレンタカーを借りて約2時間でフラッグスタッフに到着した。アムトラックのフラッグスタッフ駅駅舎を兼ねた観光情報センターでホテルのディスカウントクーポンを入手し、携帯電話で予約を取って旧ルート66沿いにあるInn Suitesというモーテルに宿泊することにした。チェックインした後、どこかで夕食を取らねばならないということでフラッグスタッフのガイドブックを調べ、アムトラック駅から南に1ブロック下がったところにレストラン兼マイクロ・ブルーがあることに気付き、ママと意気投合してそこに出かけることにした。
場所:アムトラック駅横の一方通行(Beaver St.)を入ってすぐ右側
ボクが飲んだのは「Bramble Berry Brew (Raspberry Ale)」と「Railhead
Red Ale」のハーフパイントで、ママは「R & R Oatmeal Stout」のお試しショットグラスを注文した。「ラズベリー・エール」はラズベリーの香が相当に効いていて、味も少しだけ甘い感じがした。ここの地ビールの品揃えは、「ラズベリー・エール」→「IPA」→「レッド・エール」→「スタウト」の順に濃厚でアルコール分が強くなってゆく。この順番はどこのマイクロに行ってもそれほど大きくは変わらない。ここのマイクロでは、丁度夏場だったこともあって、「へーフェヴァイツェン」も扱っていたが、旅初日から結構ハードな行程だったので疲れてこれ以上飲むことができなかった。食事の方もまあまあだったと思う。
“Brewpub in Flagstaff, Arizona. At
セーフウェイで見かけた西部のビールの数々
高温乾燥地帯を長時間運転する今回の旅、途中で車が故障でもしたら大変だ。とにかく、ミネラルウォーターのストックを常に持ち続けなければいけないと考え、夕食後フラッグスタッフ市内のスーパーマーケット「セーフウェイ」で仕入れることにした。ついでにちゃっかりとビールの品揃えをチェック。ワシントン界隈ではボクは「セーフウェイ」の品揃えはあまり評価していないのだが、さすがに西部にやって来ると、東海岸では絶対見かけることのないようなブランドが目立つ。せめて1パック買って行こうと考えたのだが、どれを選ぶか本当に困ってしまう。
カリフォルニアはノース・コースト社の「ACME」シリーズとマッド・リバー社の「ジャマイカ」、オレゴンの「ローグ」シリーズ、テキサスはシャイナー社の「ヘーフェヴァイツェン」「スタウト」、コロラドの「フライング・ドッグ」シリーズなどがやけに目立つ。アリゾナのビールとしては、「フォー・ピークス」(テンピ)、「ソノラ」(フェニックス)、「ニンバス」(ツーソン)等が幅を利かせている。いろいろ考えた末、結局ここはフラッグスタッフの地ビールということで、「Mogollon」(マギーオンと発音するらしい)の「Wapiti Amber Ale」を購入した。この旅の前半は、フラッグスタッフ周辺で数泊するので、旅のお供としてはフラッグスタッフの地ビールが適当だろう。
朝8時30分にフラッグスタッフを出発し、I‐40号線を東に30マイルほど行って、アリゾナ大隕石孔を見学した。その後再びフラッグスタッフに戻り、オールドダウンタウンの入り口近くにあるKathy’s Caféで昼食を取り、市内のローウェル天文台を訪問した。ここは、冥王星を発見した天文台として有名である。ボクは、アメリカ留学中の1986年3月に、グランドキャニオンまで行くバス旅行の途中でローウェル天文台を訪問したことがあるが、短時間のうちに駆け足で訪れたからか、パーシバル・ローウェルが1897年に建造して当初火星の模様を観測するのに利用していた望遠鏡以外はあまり記憶に残っていない。
天文台を後にして、I‐40号線を今度は西に20マイル行くと、そこがグランドキャニオンの玄関口ウィリアムズの町だ。「グランドキャニオン鉄道」の始発駅である。アムトラックで旅する人は、ここで「グランドキャニオン鉄道」に乗り換えて、サウスリムまで行けるというわけだ。4日、5日とボクたちはこのウィリアムズ駅に隣接するFray Marcos Hotelに2泊する。ここからがAAAのパッケージになっていて、夕食は2晩とも駅舎の隣りにあるMax & Thelma’sというレストランで取ることになる。
このMax & Thelma’sとホテル内にあるSpenser’sというバーのメニューを調べてみよう。国内産ビールとしては、「クアーズ」「クアーズ・ライト」「バドワイザー」「バドワイザー・ライト」「ミラー・ライト」「ミラー純生(MGD)」「ミケロブ」「サム・アダムス・クリームスタウト」、外国産ビールとしては「ハイネケン」「アムステル・ライト」「バース」「コロナ」がある。名だたる超メジャービールに対抗するように、しっかり頑張っているのがまたまた登場フラッグスタッフの地ビール「マギーオン」である。
“A mild, flowery aroma is followed by a mild,
well-balanced malt-hop taste; smooth, flowing mouthfeel; vague buttery
character; at mild-bottle attains apple cider flavor that is too sweet and too
cloying; texture and moderate effervescence diminish to zero at the end; this
pale ale fades too much to be ranked average. See how this goes with sharp cheese on
crackers.” (Bob Klein, “The
Beer Lover’s Rating Guide”)
“Very
fruity and juicy, with a sweet orange kick that is filling, complex, and very
tasty; subtle maltiness provides a soothing sweet backdrop; bitterness is
pleasant and short-lived; finishes with a beguiling, restrained spicy-malty
sweetness and a curl of hops that lingers on your taste buds; perhaps a bit too
sweet to the end. Goes with chicken
and rice dishes.” (Bob Klein, “The
Beer Lover’s Rating Guide”)
今日のメインイベントは「グランドキャニオン鉄道」に乗って行くグランドキャニオンの日帰り蒸気機関車の旅である。片道2時間15分で、現地では3時間が充てられ、バスツアーでサウス・リムの西方面の観光スポット3ヶ所をまわり、昼食をとって帰路につくという日程だった。
今回のウィリアムズでの2泊とグランドキャニオン鉄道の旅は、AAAのパックになっていてウィリアムズでの2泊については夕食と朝食の2回分がホテルの隣りのMax & Thelma’sでと決まっている。昨日も書いた通り、このレストランとホテルで飲めるアリゾナ地ビールは「マギーオン」しかない。従って、この夜はレストランでもあえてビールは注文せず、2日前の買ってあったWapiti Amber Aleを部屋で飲むことにした。ある程度冷やしておいて、パソコンの画面と格闘しながらチビチビ飲むにはなかなかよいビールだと思った。
昨日はグランドキャニオンに3時間しかいられず、ブライトエンジェルロッジよりも西側の観光ポイントをまわるバスツアーだったので、今日はウィリアムズのホテルをチェックアウトしてもう一度グランドキャニオンに向かい、ロッジよりも東側、通称「イーストリム」と呼ばれる地帯の観光ポイントの幾つかをまわった。個人的にここの眺めは凄いと思ったのは「リパンポイント」という観光ポイントで、ここからは北方から注ぎ込むコロラド川が方向を変えて西に向かい、この川を中心として両岸に展開する大渓谷が一望できるのである。また、コロラド川上流のあまり谷がえぐれていない地域(砂漠地帯)も一望できる。ボクもママも過去に1度だけグランドキャニオンには来たことがあるが、ブライトエンジェルロッジ近辺でお茶を濁していたに過ぎず、今回は車を借りているおかげで観光に幅が出来たと強く感じている。
グランドキャニオンを後にしてルート68をキャメロンに向けて走ると、両側は低木しか生えていない乾燥地帯だ。道路の北側一帯はコロラド川とその支流が形作る渓谷が続いている。道路からは浅い谷であるようにしか見えないが、実際に車を下りて近付いて見てみると、深さは数百メートルはありそうだ。グランドキャニオンほど深くはないが、両岸の崖の幅が100〜200メートルしかないため、異様な圧迫感を感じる光景だ。しかも谷間を抜ける風の影響か、谷を見下ろす崖の頂上は風が非常に強く、気をつけないと足元をすくわれかねない。ボクは昔住んでいたネパールで、こんな光景を見たことがある。盆地の町ポカラをえぐるセティ川は、市の南方では大きな渓谷を作っているが、市内を流れる間は幅20メートルほどしかない台地のすき間を深くえぐりとり、深さは100メートル以上にも及ぶのである。
キャメロンからカイエンタまでの道路は、序盤はまさに砂漠地帯という感じで、道路を西から東に砂が流れて行くのを何度も目撃した。妙な話、この道路を通っている間は、かなりの寂寥感にかられて、「自分は本当にこんなところにいていいのだろうか」と自問自答を強いられた。この気持ちはカイエンタに着いても変わらなかった。当然のことながら、カイエンタ一帯はナバホインディアンの居住区で住民の多くはインディアンである。黒人は全く見かけないし、東洋人の姿もあまり見られない。また、カイエンタはモニュメントバレー観光の拠点の町なのだが、見た感じは南米ボリビアのさらに田舎といった感じだ。かなり貧困の度合いが激しい土地なのだろう。こんな所に住んでいる人は、ブッシュがワシントンで何か言おうが、イラクに攻撃を仕掛けようが、自分達の生活には何も関係がないと思うのだろう。一世帯当たり平均所得が全米一の北バージニアからインディアン居住区に来ると、この国の貧富の差の激しさにはショックを受けざるを得ない。イラクや北朝鮮をどうこうする前に、ブッシュは先ず国内にやることがあるだろう。
さて、今日の夕食は取り合えずカイエンタ市内の「Amigo Café」で食べることにしたのだが、メニューを見るとアルコール類が一切ないことに気付いた。スーパーマーケットで少し買出しを試みたが、ここにもビール類は置いてなかった。ひょっとして「インディアン居住区=アルコールフリーゾーン」?なんて疑問が湧いてきた。インディアンにはアル中が結構多いとか。というわけで、本日は休肝日ということにしたい。
アメリカ国内の貧困という現実に打ちひしがれてから一夜が明け、少しだけ気持ちが落ち着いた。今日は、ボクにとって18年間の宿願だったモニュメントバレーをようやく訪れるのだ。朝、家族全員が6時に起床し、簡単な朝食で済ませて7時過ぎにはモーテルを出発、約20分ほどでモニュメントバレーの入り口に到着した。カイエンタを中心として半径数十マイルにわたる地域には、赤茶けた色をした奇岩、地層が非常に多く、それが長年の雨や風によって浸食、風化を受けて、信じ難い地形を形作っている。取り分けモニュメントバレーのメサ(テーブル状の台地)とビュート(西部劇等でもお馴染み、メサが侵食されて幅数百メートルの奇岩として残ったもの)の形状は独特であるが、奇岩群や複雑な地形がそこだけにしかないというものではないということがわかった。
朝8時10分スタートのジープツアーで、公園内を約2時間半観光した。公園内でも電気のない生活を送るナバホ族の住居があるそうだが、ここは貧困問題とは切り離して、こんな地形を数百万年もかかって形成してきた自然の力というのに敬服せざるを得なかった。ママもボクも昨日はとても落ち込んだが、この観光ツアーで園内をまわるうちに、何か神聖なものを見ている気がして、落ち込んでいた気分が少し和らいだ。
昼食を公園内のレストランで済ませ、12時に公園を出発、再びカイエンタに戻った後そこから今度は約70マイル南東の方角に車を走らせ、チンレィという町を目指した。ナバホインディアン居住区のど真ん中に位置する町だ。途中幹線道から外れて、砂漠あり、段丘あり、奇岩ありの道路を走った。地平線の彼方まで道路がまっすぐ続いていたり、遠めにもそこだけにわか雨が降っている一帯が見渡せたり、ドライブとしてはとても楽しかった。人が全く生活していない地域から抜けてようやく町に辿り着くと、ほっとする一方で再び貧しい生活を思い知らされる。一年中砂と戦っているような土地だから、建物も土色をしている。公共の土地で平然と草を食む馬や牛がいたり、野良犬が闊歩している風景は、途上国と一緒だ。
キャニオン・デ・シェイ(Canyon de Chelly)は、巨大な1つの岩が長年の侵食を受けて谷間に広い平地を作った姿を見られる国定公園だ。この渓谷には、ナバホインディアンよりももっと古い先住民族が住んでいた跡が残っている(この辺りに住んでいた先住民は「Anasazi」と呼ばれているらしいが、ボクが飲んでいるビール「Mogollon」のブランド名も先住民の部族名から来ているらしい)。切り立った崖の、平地から高さ数フィート上辺りの岩の窪地に住居を作って、彼らは住んでいたらしい。それにしても、谷間の平野の広くて平らなこと。今は水量が少ないが、流れる川が蛇行してその周辺には木が生えているために、上から見下ろすと緑の並木が蛇行しているように見える。「風の谷のナウシカ」で出てきた「風の谷」を連想させる。雨が降れば流量も増えて、川が普段の姿に戻った時にはその一帯は肥沃な農地と化している。崖の上は直射日光で暑いが、谷の底は適度な日よけもあるし、農耕生活には適していたのだろう。
さて、カイエンタに戻って夕食は昨日とは別のレストラン「Golden Sands」に出かけたのだが、ここにもアルコール類は一切置いてなかった。これは本格的に「アルコールフリーゾーン」なのかもしれない。こんな時はその土地の制度に抗っても仕方がないので、予め買ってあった「Magollon」を1本、部屋で冷やして飲むしかない。
今日は、朝は少し余裕を持ってモーテルを出発、途中ナバホ・ナショナルモニュメントに寄り道して、バタタキン遺跡(Batatakin Ruin)を見学した。ビジターセンターから1km歩いて展望台に出ると、そこからは昨日のキャニオン・デ・シェイとよく似た地形の岩壁の麓の窪地にちゃんとした先住民族の住居跡が残っている。13世紀までは人がAnasazi族が住んでいたのだ。ここの住居跡はキャニオン・デ・シェイよりもはっきり残っていて、ここは寄り道しても立ち寄る価値があると思った。
その跡は州道160号線沿道にある「Elephant Feet(象の足のような巨岩)」「Dinosaur Tracks(1億5千万年前の恐竜の足跡等の化石)」(写真参照)といったスポットに立ち寄り、さらに89号線で約50マイル南下して、フラッグスタッフにまで戻って来た。
フラッグスタッフで昼食を取る予定であったが、ママの提案もあって89号線から少しだけ外れたところにある日本食レストラン「Hiro」に入ることにした。観光ガイド等には全く載っていないが、フラッグスタッフのセーフウェイで買い物をした際、たまたま見かけたレストランだ。久し振りの日本食に家族一同興奮気味で、一人一品注文したところ、一品当たりのボリュームが相当大きくて面食らった。お店にいらしたオーナー夫人とお話する機会があってお話を伺った。フラッグスタッフ在住の日本人は5人だけで、あとはノーザンアリゾナ大学(NAU)の日本人留学生が50人くらいいる程度だとか。自ずとレストランのターゲットとする消費者は一見の日本人観光客ではなく、地元在住のアメリカ人ということになる。開店未だ5ヶ月だが、ご主人は滞米生活6年の寿司職人で、奥様は来られて3年だとか。ここのレストランの案内は地元の観光ガイドにも載せておらず、メインストリートからも外れているので、日本人の観光客は偶然見つけた人が訪れるくらいなのだそうだ。日本の競泳チームがNAUでよく合宿やるんですよねと尋ねたところ、先日のバルセロナ世界選手権平泳ぎで世界新記録で金メダルを獲得した北島選手は毎日のようにここに食べに来ていたのだそうだ。グレイハウンドのバスディーポからも歩いて行ける距離なので、グランドキャニオン観光のためにフラッグスタッフを訪れる方がいらしたら、是非お立ち寄りになってはいかがだろうか。
Hiro’s
Sushi Bar
昼食後、89号線をさらに南下して、日光いろは坂のような曲がりくねった道路を経て、オーククリークキャニオンという渓谷に入って行った。キャンプ場が沢山あって多くのキャンパーが宿泊しているようだった。さらに南下すると、赤茶けたビュートが川の両岸に展開し、じきにセドナという町に到着した。日本の観光ガイドには「ヤッピーな町」と紹介されているようだが、ボクはこの手の観光に依存する町の目抜き通りが観光客目当てのツアー会社やギフトショップでいっぱいになるのは日本の軽井沢や清里でも同じだと思う。ペンシルベニアのランカスターやゲティスバーグだって大して変わりはない。ボクはここのホテルは事前に予約していて、「Inn of Sedona」というベストウェスタン系列のリゾートホテル(URL:http://www.innofsedona.com/)に2泊することにしている。観光客がたむろしている一帯から少し離れて、オーククリークキャニオン方面に展開するメサやビュートを一望できる絶好の立地である。
ここはなぜかマッサージセラピーやヒーリング等が有名な町でもある。ママはさっそく「Crystal Castle」というスピリチュアルヒーリングのお店に入ったのだが、そこでボクが驚いたのは、セドナは何かしらエネルギーが収束しているスポットであるらしく、UFOがよく目撃されるのだそうだ。それ系の書籍も若干置かれていて、ボクはついつい見入ってしまった。これでもよく学研の「ムー」を購読していた世代なのだ。
セドナにマイクロ・ブルーがあるのは事前に調べてあったので、さっそく行ってみることにした。「Tlaquepaque」というアート&クラフトの専門店街の一角にある。東方向のビュートの1つがすぐ前方に見え、なかなか景色もよいレストランになっている。
場所:ルート89Aからルート179に入り、緩やかな坂を下りきった左側に位置する。
336 Highway 179,
Phone: 928-282-3300
URL: http://www.oakcreekpub.com/
ここには現在7種類ほどのビールがある。「ライト」「ラガー」「ヘーフェヴァイツェン」「ペールエール」「アンバーエール」「ナットブラウンエール」「スタウト」である。全部飲みたいのもやまやまだったが、ここはハーフパイントのグラスがないので、ホールパイントなら2杯が限度ということで、「Horseshoe
Hefeweizen」と「Forty-Niner Gold Lager」だけを飲んだ。特に前者の場合は、グラスにレモンスライスが付いていて、レモン汁を搾って飲む独特のスタイルだった。ボクはバッファローチキンウイングを注文したので辛くてビールが進んだけれど、他の家族はピザやスパゲティを注文して軒並み外して、「これだったらフラッグスタッフのBeaver St. Breweryの方が美味しかった」との指摘があった。さすがニューウェーブの若者達の集まる土地であるだけに、味付けにハーブを加えたりした工夫も見られるのだが、家族の受けはあまりよくなかった。お昼に食べ過ぎた影響もあったのかもしれない。ボク自身は、もう少しお店にいられたら、もう1杯くらいは注文できたかもしれないとやや名残惜しさを感じた。出来たての新鮮なビールなら、どこで飲んでも美味しい。普段の2割増しぐらいのボリュームの料理であることを想定して少しだけ少なめに注文するよう心がければ、そこそこ楽しい食事になることだろう。
今日は、終日わりとのんびりとセドナ周辺で過ごした。各種ツアーに参加してみるという手はあったのだが、旅もここまで来るとちょっと疲れもたまってきているので、おとなしく過ごすことにしたのだ。午前中は子供達お待ち兼ねの屋外プールで約2時間を過ごし、11時過ぎから「Crystal Castle」や「New Age」といったヒーリングやマッサージ、精神世界に関する書籍や道具、アクセサリー等を扱うお店に入って、アロマセラピーの本を購入した。これらのお店ではサイキックリーディング(占い)もやっていて、日本人の観光客が結構たむろしていた。ボクはあまりその気もなかったが、試聴したCDが心を落ち着かせるものだったので、2枚買ってみることにした。カーステレオで流しながらドライブをしてみたが、後部座席で子供達が喧嘩を始めても効果は確認できず、思わず2人に怒鳴ってしまった。
その後、昼食を取れる場所として、昨日「Hiro」の奥様から聞いていた「Minami」という日本食レストランを訪ねてみた。ご主人がちょっと偏屈だが味の方はセドナ市内に3件ある日本食レストランの中で最も美味しいと聞いたからだ。ルート179を「ヴィレッジオブオーククリーク」という町まで走り、その沿道で発見はしたが、なんと本日休業。土曜日のお昼というのは開いていないようだ。仕方なく引き返し、途中で「ホーリークロス教会(The Chapel of the Holy Cross)」に立ち寄った。ビュートの麓にあるチャペルで、周辺の奇岩群を一望できるなかなかのロケーションだ。
市内に戻ると、先ずは溜まっていた洗濯物を片付けるために、コインランドリーに直行した。洗濯機に衣類を入れてセットすると、約40分は待ち時間ができる。取り合えずファーストフードでも買ってホテルに戻るかと考えて車をうろちょろさせていた時、偶然にも「Oak Creek Brewing Co.」の看板を見つけ、それじゃここのマイクロで昼食を食べてみようかということになった。
ルート89Aをセドナの繁華街から約2マイル南に下り、右側に「Basha’s」というスーパーマーケットの看板が見えたら、それを過ぎた最初の交差点を右折する。200メートルほど奥に入ると、醸造会社の立看板がある。
URL: http://www.oakcreekbrew.com/oakcreek/home.html
昨日の夕食をとった「Oak Creek Brewery
& Grill」はこの醸造会社とロゴのデザインが似ているので姉妹店だと思われるが、正真正銘の本社工場のマイクロはテーブル5つとカウンターがあるだけのシンプルな造りで、製造しているビールも、「ラガー」「ヘーフェヴァイツェン」「アンバーエール」「ナットブラウンエール」の四種類しかない。工場の規模も小さく、家族経営の醸造所である。昨日既に最初の2つはクリアしているので、今日は昼食であるにも関わらず、アルコール度5.5%の「Oak Creek Amber Ale」に挑戦した。泡はあまり出ず、炭酸の含有度は非常に少ない、清涼飲料水とあまり変わらない飲み口で5.5%というのはちょっと信じ難い気がした。ここのマイクロは通称「Bavarian Kitchen(バイエルン風食堂)」と呼ばれているように、扱っている料理がどれもドイツ風だ。今日はちょうど土曜日だったので、屋外のビアガーデンでは、夜9時30分からバンドによる生演奏が予定されていた。本日のバンドの名が「Shinobu」というので、ひょっとしたらセドナに土着した日本人アーチストの演奏でもあるのかと思ったが、何しろこの日の夕方はセドナ郊外のクラークデールという町から出発する「ヴェルデキャニオン鉄道」の4時間ツアーに参加する予定があったので、残念ながらとても行けないと思った。
「ヴェルデキャニオン鉄道」の「黄昏列車(Twilight Train)」は、通常の日中4時間運行のツアーとは別に、夏期の週末限定で夕方5時30分に出発し、渓谷上流の廃村パーカーズビルまでの片道20マイルのツアーだ。往路は夕日に染まる渓谷の美しい姿を楽しみ、復路は屋外観覧車から夜空の星を観賞できる、とてもロマンチックなツアーだ。詳細は「パパの趣味の世界・鉄道編」で紹介しようと思うが、樹生と千智にとっては滞米生活最後の列車の旅で、最も印象的な旅を経験することができた。
クラークデールからの帰路、子供達が車の中で寝てしまったので、ホテルに戻って子供達をベッドの上に連れて行った後はママと2人の時間を楽しむことができた。ここのホテルは客室の前にテラスがあり、テーブルが置かれている。夜空の星を眺めながら、昨日このホテルに着いた時にウェルカムドリンクとして部屋に置かれていたシャンパンと未だ残っていた「Magollon Wapiti Amber Ale」を飲み、こんなゆったりと2人でくつろげる時間は久し振りだと話し合った。満月が近くて空の星は少し見辛かったけれど、それでも流れ星を幾つか目撃した。
今日はまる1日を移動に費やした感じだ。朝とりあえず子供達を1時間ほどプールで泳がせた後で午前11時少し前にチェックアウトし、セドナからI‐17に上がり、フェニックスを通過してI‐10に入り、ツーソンまで約210マイルほどを走った。途中カーサグランデの「バーガーキング」で昼食休憩を取った以外は一気に走り、午後3時30分頃には予約してあったモーテルに到着した。日中の気温は華氏114度まで上昇し、休憩エリアではオーバーヒートでエンジンフードを開けている車が続出していた。かく言うボクのレンタカーも、制限速度いっぱいで走ると水温が上昇してオーバーヒート気味になってきた。道路の路面温度が上昇してパンクしている車も多く、フェニックスからツーソンまでの90マイル強は、水温計とにらめっこで恐る恐るのドライブだった。
今日の目玉イベントは、アメリカ・マイナーリーグの野球の試合、ツーソン・サイドワインダーズ対ラスベガス・51‘sのナイトゲームだった。それぞれ、メジャーリーグのアリゾナ・ダイヤモンドバックスとロサンゼルス・ドジャースの3Aで、ラスベガスの方には、以前巨人のドラフト1位でオリックスでもプレーした木田優夫投手が在籍している。ツーソン・エレクトリックパーク球場に到着し、ボックスオフィスでチケットを購入する。ネット裏のボックス席は1枚なんと8ドル!メジャーだったら最低10倍はかかる。ラスベガスの先発が木田投手ではなかったので、ブルペンに行けば見られるのではないかと思い、樹生と2人でライトスタンド側のブルペンに行ってみた。背番号28の木田投手は、屋根付きのブルペン控席にいたが、ボクと樹生が日本語でしゃべっていたのを聞きつけて外に出て来てくれた。「今日は登板予定あるんですか?」「ええ」―――プロ野球の選手と言葉を交わしたのはボクが小学生の頃に大垣のサイン会で中日ドラゴンズの木俣達彦選手のサインをもらった時以来だ。試合の方は結局ラスベガスが2−1でツーソンを破った。接戦だったのでラスベガス側は先発−中継ぎ−抑えと3人できっちりリレーしたため、中継ぎ2番手以降の位置付けだった木田選手の出番はなかった。試合終了直前にもう一度ライト側ブルペンに足を運び、試合終了と同時にグランドの野手陣に合流するためにブルペンを後にした木田選手に「お疲れ様でした!」と声をかけた。木田選手は右手に持ったグラブを上げて応えてくれた。メジャーともなれば松井にもイチローにも通訳が付くが、マイナーの場合は専属通訳など付かない。そんな中でたった1人でメジャー復帰を目指している木田選手を是非応援したい。(*木田選手は、8月13日にメジャー昇格を果たし、ドジャースに合流しました。おめでとうございます!)
メジャーと違い、マイナーリーグの球場には屋根がなく、外野スタンドは芝生席になっている。内野とネット裏のボックス席以外は基本的に自由席で、ツーソンの場合は5ドルの入場料を払えばどこで見てもいい。この日の観客数は3千人弱だった。ツーソンの球場だからツーソンならではの地ビールでも販売されているのかと思ったら、あったビールはお馴染みの「ベースボールビール」ばかりで、ボクは仕方なく「Rolling Rock Extra Pale」を注文した。また、せめてマイナーでは7回表の攻撃終了後に「God
Bless America」の斉唱をするのは止めて欲しいと願っていたが、メジャー同様にゲームを中断して全員起立で斉唱させられた。「9・11」以後、メジャーリーグの試合では、7回表攻撃終了後のストレッチ(7th Inning Stretch)の際、「Take Me
Out To The Ball Game」の代わりに「God Bless America」を斉唱するようになった。ボクがどうしても好きになれないイベントの1つである。ツーソンのせめてもの救いは、「God Bless America」に続いて「Take Me Out To The
Ball Game」の斉唱もあったことだ。それ以外にも、この日はファン感謝デーで、入場時に子供達にはアリゾナ・ダイヤモンドバックス2001年ワールドシリーズ制覇記念Tシャツが無料で配布されていたし、ホットドッグが1ドルに値下げ販売され、試合終了後は子供がグランドに出てダイヤモンドを1周するというイベントもあった。うちの子供達も、ダイヤモンド1周を経験することができた。マイナーとはいえサービスは満点である。
今日は、砂漠博物館とオールドツーソンに行くことを目玉に考えていた。開園時間の早い方に先に行こうということで、アリゾナ・ソノラ砂漠博物館に先に行くことにした。ボクは個人的には1989年2月にここを訪れていて、ここの動植物の展示は子供達には一度見せておきたいと思っていたのだ。期待通り、ヘビやトカゲといった爬虫類、ムカデ、ミミズといった節足動物、タランチュラ等には興味津々で、歓声をあげていた。屋外にも、ピューマやブラックベア、カワウソ、コヨーテ等が飼育されている他、園内にはいろいろな種類のサボテンが生育していて、とても楽しいテーマパークだと思う。14年前に来た時には気付かなかったが、ここは鉱物資源の展示もあって、子供達が実際に化石の発掘を体験できるコーナーや、展示されていた輝石の欠片を実際に拾って持って帰ることができるアトラクションもあった。子供達には受けたと思う。ただ、今日も気温が華氏100度を大きく超え、屋外の展示物をじっくり観察している余裕はあまりなかったのが残念だ。博物館の後、その近くにあるオールドツーソンスタジオに行ってはみた。栃木のウエスタン村みたいなところで、西部劇のアトラクションとしてはなかなか面白いのだが、こちらの方は駐車場の車の数も10台以下で、さすがに暑すぎて来客数が少ないようだ。我が家の一行には幼い子供と妊婦がいる。無理させてはいけないと思い、結局オールドツーソンには行かないことにした。
昼食をどこで食べるかが問題となり、結局、ツーソンのダウンタウンでガイドブック「地球の歩き方」に出ていたレストランに行ってみることにした。記載された住所に行ってみると、店名が「Garcia’s」に変わっていたが、ツーソンの旧駅舎を改装して作られたメキシカン料理のレストランであることは変わらず、この旅初めての本格的メキシカン料理を食べた。ビールはメキシカンビールが豊富にあった。国産ビールもあることはあったが、ウェイトレスに銘柄を聞いてみるとアリゾナビールが見当たらないのに、またまたコロラドの「Fat Tire」が登場した。「Fat Tire」の名を目にするのは、フラッグスタッフのセーフウェイ、ヴェルデキャニオン鉄道、ツーソンのウォルマートに続いて4度目である(この日はさらにスーパー「FRY’s」でも目撃することになる)。このビール、コロラド産なのに、アリゾナでのポピュラリティは「バドワイザー」「クアーズ」「ミラー」にも匹敵する。もはや飲むしかあるまい。パイントグラスで注文してみたところ、これは美味しい。同じアンバーエールなのに、「Mogollon」他、今回の旅で飲んだどのアンバーエールよりも美味しい。さらっとした感じで、最初はピルゼンかと勘違いしたくらいだった。アリゾナで受けている理由がわかるような気がした。「Fat Tire」については、「パパの趣味の世界・ビール編」の本編で改めて紹介したいと思う。
昼食時にママと千智が少しだけ料理を残して持ち帰りにしたため、帰りはモーテルに直行することになった。子供達とのお約束で、プールで泳ぐのに付き合うことにしていたので、1時間30分プールで過ごした。翌日のフェニックスのホテルの予約をするのに時間を費やしていたら、いつの間にか6時近くになっていた。夕食の時間だ。ツーソンに来たら、「Nimbus」か「Gentle Ben’s」のマイクロに行きたいと考えていたので、地図上で比較的調べやすかった「Nimbus」のマイクロに行ってみることにした。しかし、実際に町をドライブしてみると肝心の44th Streetがどうしても発見できず、やむなくギブアップ。仕方なく途中で見かけた「Sushi Garden」なる日本食レストランに入った。ここでアリゾナビールが出て来ないかというささやかな期待も虚しく裏切られ、ビールを飲む気にもなれずに食べるものだけ食べて退散することになった。結局、今日の収穫は「Fat Tire」を飲んだということだけだ。
ツーソン郊外のモーテルをチェックアウトして、ツーソン北西のオラクルにあるコロンビア大学バイオスフィア2に出かけた。ここは外界と完全遮断した環境の中で地球と同様の環境を人工的に作り出し、人口増加や地球温暖化の影響について調査研究をやっている。ボクたち家族は人口問題の片棒を担いでいるが、一方でママは特に地球環境の問題について非常に高い関心を持っている(こういう問題は、女性の方が関心が高いのだと思う)。6歳以下の子供同伴ではこの実験室内には入れてもらえないが、建物の中の中央制御室や展示室の見学はできるし、小さな水族館もあるので、それなりに楽しめる施設ではある。なにしろこの日も日中の気温は華氏100度を大きく超えた。外を歩いているだけでも体力の消耗が相当に激しいのである。少しでも室内にいられるとほっとする。個人的には、実験室内の植物が地球上の植物をどのように代表しているのか、そしてこれらの植物を室内に持って来ることで、本当に地球上と同様の環境を作り出しているといえるのか、未だ疑問は解けていないけれども、このようなカネと時間のかかる実験は残念ながら企業の寄附行為がアメリカほど盛んではない日本ではとてもできないので、この実験の成果が、環境に対して必ずしも優しくはない経済行動をとりがちなアメリカで共有されてゆくことを願ってやまない。(一説によるとアメリカはスペースコロニーでの生活を想定してこのような実験を支援しているという。アメリカの持つフロンティアスピリットだと賞賛することもできるが、地球を汚すだけ汚して最後はカネを持っている奴だけで宇宙へ移住かと考えると、ちょっと頭には来る。)
バイオスフィアからフェニックスまでの道は、I-10をあえて使わず、州道を走り続けた。途中一度だけI-10に乗ってみたが、乗って快調に走り出して暫くしないうちに渋滞に巻き込まれ、全く動けなくなってしまった。仕方なくUターンして近くのインターチェンジでハイウェイを下り、結局フェニックスまでそのままハイウェイを使わずに戻って来た。2時間半かかってしまった。
フェニックスとはいっても、本日の泊まりはテンピという隣町だ。テンピはアリゾナ州立大学(ASU)を中心に発展した学生の町で、ASUのキャンパスの周辺にはマイクロがいくつかある。テンピで名前のよく知れた地ビールは「Bandersnatch」と「Gordon Biersch」「Uptown」等があるが、地図上ですぐに確認できた「Four Peaks」のマイクロに行ってアリゾナ家族旅行最後の夜を祝うことにした。
Four Peaks Brewing
Company
テンピのRural
Rd.とMcClintock Rd.の間、テンピを東西に走るUniversity
Dr.を東に走りMcClintock Rd.で右折、最初のブロック(8th St.)で右折して道なりに進むと、進行方向の右側に見えてくる。
Phone:
480-303-9967
旅の途中で何度か見かけたのが、店の軒先で水を霧状にして散布して、暑さを和らげる工夫である。アリゾナ州の中でも、とりわけフェニックスやツーソンは日中の最高気温が110度を超えることが多い。この日はモーテルにチェックインした後屋外プールで少し泳いだが、水がお湯になっていて入っていても暑かった。Four Peaksのマイクロに行って少し嬉しかったのは、屋外に出されたテーブルであっても、軒先から散布されている霧状の水のお陰で、そこそこ涼しいと感じることができたことだ。
昨日、ツーソンのマイクロに行けなかった悔しさがあって、今日はとにかく何種類か試してみたかった。そこで、7ドルするサンプラーを注文し、ショットグラスで8種類のビールを飲めるものを注文した。8種類も出てくるとどれがどれだか当てるのも楽しい。いろいろ試して、やっぱり夏は「Hefeweizen」や「Gold Ale」といった喉越しが良くてアルコール度が低いビールだなと改めて思った。ここの売りは「Kiltlifter Scottish Ale」と「8th St. Scottish Amber Ale」だろうが、残念ながら今の季節だったら「Raj IPA」の方が自分にとってはまだましだった。その他に、季節限定のビールがあったが、これははっきり言って不味くて飲めなかった。「Oatmeal Stout」は論外だ。スタウトはママが好きだから飲んでくれた。その他にも、「Arizona Peach Ale」という桃の匂いがするエールがあって、多分一番喉越しがすっきりしていたと思うが、ちょっとアルコール度が低くて水みたいな感じがした。食事の方もアペタイザーを4品注文して丁度良いくらいだった。
Four Peaks Kiltlifter Scottish-Style Ale
“Bottled
or on tap, Kiltlifter is chocolaty and lightly malted, with a smooth ongoing
bitterness at the swallow. The
deep, penetrating maltiness nicely complements a sweet, buttery mouthfeel at
mid-bottle. Some spice crops up,
escorted by a delightful hint of peat-smoked barley. The alcohol (6.0%/vol.) discreetly
accompanies a hit of malty-peat taste at the last swallow of this well-made
ale.” (365 Bottles of Beer for the Year 2003)
Four Peaks
“Sugar-sweet
taste is restrained, but overall this is a relatively complex ale with a
moderated, understated bitterness; malty aroma; medicinal presence becomes
overwhelming; underneath the unpleasantness there appears to be a
decent-tasting beer, but it’s not enough to redeem the
negatives. 1.1” (Bob Klein, “The Beer Lover’s Rating Guide”)
もう一軒、「Bandersnatch」くらいはハシゴしてやろうかとも最初は考えていたが、さすがにサンプラーを飲みきるとそれなりに酔っ払うので、もうホテルに戻ろうという気になってしまった。
早々にモーテルをチェックアウトして空港に向かった。ボルチモア・ワシントン空港(BWI)での経験から、セキュリティの検査ゲートを抜けるのに異常に時間がかかるのを恐れたからだ。BWIは最悪だった。フェニックスのスカイハーバー空港はセキュリティで混雑することもなくすんなり搭乗口まで行くことができた。
搭乗までの残り時間で最後の悪あがきの1杯をと一瞬考えたものの、搭乗ゲート変更アナウンスがあったりしてバタバタして結局行きそびれてしまった。今回のアリゾナ地ビール紀行の結論はというと、結局のところ、なぜ「Fat Tire」というコロラドビールがアリゾナ州内でこれほどポピュラーなのかを考えてみると良いということだろう。同じアンバーエールという基準で考えた場合、「コロラドビールに勝るアリゾナビールなし」ということである。アリゾナのマイクロ業者には申し訳ないが、今回の旅の間に飲んだアンバーエールとしては、「Fat Tire」が最も美味しかった。勿論、「ヘーフェヴァイツェン」については今が旬だからどこのマイクロでも美味しいと思ったけれども、例えば「Four Peaks」や「Mogollon」が仮にワシントン界隈で飲めたとしても、ボクはコロラドビールをお薦めすると思う。
ただアリゾナのマイクロ業者に対してはお礼が言いたい。どこの土地に旅に行っても、どのレストランに入って何を食べるのかは非常に悩む。その点では、日本食を食べたいと思わない時に入るレストランを選ぶ基準として、地ビールが飲めるかという点にかなりこだわることができた。そして、その多くのレストランで、しっかりキッズメニューが用意されていて、家族連れで入ってもいっこうに支障がなかったのである。学生街であるテンピはともかく、フラッグスタッフやセドナのマイクロは子連れの観光客をある程度視野に入れてメニューを揃えている。また、アルコールを扱っていない地域があるということも勉強になった。
真夏のアリゾナは結構きつい旅であった。暑すぎるツーソンやフェニックスは割愛して、モニュメントバレーよりさらに先にあるコロラド州のデュランゴ辺りまで行くか、セドナでもう1日とってもよかったかもしれないとママと話をした。デュランゴまで行けばもう1つ蒸気機関車に乗れたし、未知のコロラドビールと遭遇したかもしれないし、セドナのマイクロでもう少し違った種類のビールも飲めたかもしれない。機会があれば、今度はコロラドに挑戦したいものである。
ご愛読ありがとうございました。