いまだに良くわからないワインの選び方について

 

20年近く前のアメリカを知っている者から見ると、アメリカ人はワインをよく飲むようになったと思う。1985年に僕が留学していた頃、スーパーマーケットに行くと、ワインの棚よりもウィスキーやビールの陳列棚の方が幅をきかせていた。ウィスキーはたいていの州ではスーパーでの販売が禁止されているようで、買いたい人はハードリカーの専門店に行かねばならない。そして、スーパーから姿を消したウィスキーに代わって、ワインが徐々に勢力を拡大してきたのである。

 

多分、カリフォルニアワインが十数年にもわたる試行錯誤の下、徐々に味が改善してきたことが大きいのではないかと思う。また、グローバリゼーションの旗振り役でもあるアメリカでは、世界中のどんなものでも消費者がほしいものが手に入るのが本当の意味でのグローバリゼーションであるとでも理解されているのかもしれない。だから、スーパーの陳列棚を見ると、カリフォルニアワインに加え、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、チリといった、世界中のワインが勢ぞろいしているような気がする。

 

その数はよくわからない。僕はワイン通ではないので、どの銘柄の何年産がいいのか、赤が良いのか白が良いのか、皆目見当が付かないのである。これはお薦めだとか、俺はこれしかダメだとか、そんなこだわりは全然ない。普段ビールを飲まない妻も、ワインはお相手をしてくれるので時々は週末の晩酌でワインを1本開けたりするのだが、当たり外れが結構多い。

 

いったいどうやったら美味しいワインに巡り合えるのだろうか。答えを見つけたわけでは決してないけれど、人の話とか自分の経験では、こんなところだろうか。

 

l        オタクに聞け: 世の中、「私はこのワイン何年ものじゃなきゃダメなのよね」ってレストランのワインリストを見て薀蓄をたれる人が必ずいる。僕は、人のテイストなんて主観的なもので、自分が美味しいと思うワインが他の人にも受けるっていうのは、よっぽど味が違わない限り考えられないと思っている。でも、こういうワイン選択に一家言を持つ人のおっしゃることには取り合えず従ってみた方がいいと思う。他のワインとどこがどう違うのかはワインリストを見たってわからないのだから、どこそこ地方の何年のぶどうは出来が良いとかいう基礎情報を持っている人には聞いてみるものだと思う。

 

l        お店のお薦めにとびつけ: ワイン専門家のご意見を拝聴するのと同様、ワインショップに行ってあまりのワインの数の多さに立ちすくみ、どれにするか決めかねている時は、お店のお薦め銘柄として、入り口近くに大量に山積みしてある銘柄を迷わず選ぶとよい。バージニア北部に店舗を構える「トータル・ワイン」や、健康食品専門スーパーの「フレッシュ・フィールズ」には、そういう山積みのワインが必ずある。それを選ぶのだ。良いものを安く売っているスーパー「トレーダー・ジョーズ」は、限られた店舗の床面積の中で、陳列する品物を相当に厳選している。そんな中で選ばれたワインは、どれを選んでもそこそこ美味しいような気がする。

 

l        人が何を買うか観察しよう: 最近気付いたのだが、コストコのような卸売スーパーで大量に置かれているワインを選ぶ際、客が何を買っているのか注意して観察してみると良い。以前、コストコで買い物していたら、オーストラリアの「ウルフ・ブラス」という2000年もののシラーズ・ワインを15本くらいまとめ買いしている人を目撃した。そんなに大量に買うということは多分美味しいのだろうと思った私達も、既に残り少なくなっていた「ウルフ・ブラス」を1本買って飲んでみた。確かに美味しかった。

 

l        テイスティングで決めよう: バージニアやメリーランド、ペンシルベニアにはワイナリーが多い。地ビールならぬ地ワインがかなり多いのである。僕達はバージニアのワイナリーしか行ったことがないけれど、たいていのワイナリーでは試飲をさせてくれるので、幾つものぶどうの品種から作ったワインを試してみて、自分が一番美味しいと感じたものを選ぶことができるのだ。多くのワイナリーでは、ぶどう畑の中にベンチを設けて、屋外でピクニックが出来るようアレンジしてくれているところが多い。気に入ったワインを1本買って、ノーザン・バージニアの丘陵の田園風景を眺めながらワインを開けるのは、バージニアの夏から秋にかけての楽しみでもある。バージニアは主に白ワインで有名だ。試飲だけでも結構酔っ払うので車を運転して行くのはちょっとアブナイ。でも、こうしたワイナリーは、なんとリムジンサービスまでやっているのだ。恐れ入ります。