アメリカ鉄道巡りP

ウェスタンメリーランド観光鉄道
Western Maryland Scenic Railroad

 

 

 

 


 

場所:メリーランド州カンバーランド

13 Canal St., Cumberland, MD 21502

 

アクセス:ワシントンからは車で約2時間30分。I‐270、I‐70からさらにI‐68を経てカンバーランドに入ったら、Exit‐43Cでハイウェイを下りる。カンバーランド駅はその正面。

 

カンバーランドは実はここ1年半の間、ずっと一度は行ってみたいと思っていた町だった。東西に長いメリーランド州の西端に近い町で、上空から見ると山が洗濯板のように波状に連なっているアレゲニー山脈のど真ん中にある盆地の町だ。 山間地を走る鉄道はパワフルでなければいけない。ボルチモア&オハイオ鉄道が西に延伸する19世紀の歴史の過程で、貨物列車を牽引する蒸気機関車は、どんどん巨大化していった。つまり、ここは「機関車トーマス」ではなく、「ゴードン」や「ヘンリー」でないととても坂を登ってゆくことができないのだ。現在このカンバーランドからさらに西のフロストバーグまでを往復する「ウェスタンメリーランド観光鉄道」を走り続ける蒸気機関車は、通称「マウンテン・サンダー」と呼ばれるボールドウィン280型734号、1916年製である。おそらく、東海岸一帯で見ることができる最大級の蒸気機関車なのだ。しかも、ここは観光目的で存続されているという路線である。(但し、「マウンテン・サンダー」が走るのは金曜日から日曜日にかけてだけで、あとはディーゼル機関車が牽引するらしいから訪れるには注意も必要だ。)

 

1年半越しの念願がかなったのはひょんなことから職場の同僚に誘われてカンバーランド近くのロッキー・ギャップ州立公園で1泊2日のキャンプに出かけたからだ。翌日朝にキャンプを撤収してそこからは三々五々それぞれ次の目的地を目指す予定を立てることができたので、我が家としては、帰国前の駆け込み列車ツアーということで、「マウンテン・サンダー」体験ツアーに出かけることになったのである。ツアーは1日1本、午前11時30分の出発で、帰着が午後3時という長丁場である。ファーストクラスはダイニングカーで、列車に乗りながら昼食をいただくことができる。当然ながら事前予約が必要であるが、予約はオンラインで済ませることができる。

 

事前に十分言い聞かせて行く気にさせていたにも関わらず、我が家の王子は、キャンプで一緒だった田中家のみどりちゃんに誘われ、キャンプ撤収後キャンプ場内の湖で釣りをやりたいと言い出すトラブルがあった。説得もままならず、虚しく時間が経過してゆく。釣り糸を垂れてからの時間的猶予は15分程度しかない。とにかく最初に釣り糸を垂れさせて、最初に釣れればそれでハッピーなのだから、とにかく15分の間に釣果を挙げることが大事だ。なのにうちの王子様ときたら、餌の生きたミミズが掴めない、ちぎれない、釣り糸に付けられない。平気でミミズをつまめるみどりちゃんはさすがにネイチャー指向のパパのお嬢さんだ。そうして残り時間は5分を切った。ようやく釣り糸を湖面に垂れた。2分待った。そしたらいきなり引きがあって、なんと小さな魚が針に引っかかってくれた!なんというドラマチックな展開、いきなり釣れてご満悦の樹生王子の記念写真を撮影すると、すぐに駐車場への誘導した。信じられないくらいに樹生君は釣りを続けるのを簡単に諦めた。やっぱり機関車には乗りたいのだ。

 

そうしてカンバーランド駅に20分ほどで辿り着いた。さっそく4階建の駅舎に入り、プラットフォームに出た。そこには「マウンテン・サンダー」の勇姿だ。乗車するとすぐに出発進行。ダイニングカーは機関車の直後に繋がれているので、「マウンテン・サンダー」の吐く煙の激しさが間近で見られる。坂を登ってゆくにつれ、進行方向右側の車窓からアレゲニーの山並を一望できるポイントを幾つも通過し、鉄橋を渡り、トンネルを1つ通過する。ウィルミントン西部鉄道の時にも申し上げたが、この手の観光鉄道は、夏の緑の山並以上に、秋の紅葉の季節の方が景色が良い。見晴らしの良さでは周辺に森や林がないストラスバーグ鉄道が素晴らしいが、おそらく紅葉の季節の景色と、山の彼方まで見渡せるポイントを幾つか持っているという点では、「ウェスタンメリーランド観光鉄道」はお薦めである。約1時間10分をかけて終点のフロストバーグまで行く。そして、駅のプラットフォームの外れには転車台が置かれており、ここまでパワフルに客車を引っ張ってきた「マウンテン・サンダー」が、この転車台の上で180度回転し、これまで引っ張ってきた客車の横を素通りして最後方に回り込み、そこで最後尾の車両と連結する。復路準備完了だ。ところが、乗客の方はフロストバーグ駅周辺のギフトショップやカフェテリア、博物館等で約1時間少々の休憩を取っている。ここで気が付いたのは、別に食事付きのファーストクラスを家族4人分合計110ドルも払って確保しなくても、とりあえず通常のコーチクラスを取っていれば、合計は58ドルで済むということだ。復路出発までの時間はたっぷりある。フロストバーグのレストランで軽く昼食を取ることはできたのである。

 

ウィルミントン西部鉄道を紹介した際にも述べたが、紅葉の季節にウェスタンメリーランド観光鉄道を訪れることができた方は、是非感想をお聞かせいただきたいと思う。おそらくアレゲニー山脈のど真ん中だったら10月下旬には大丈夫なのではないかと思うが、ボクはその時期はギリギリのタイミングで経験することができそうもない。カンバーランドの駅舎もなかなか整備がされている。観光列車が運行する時間だけ開くカフェテリアや、オリジナリティ溢れるグッズが豊富に置いてあるギフトショップがプラットフォームと同じフロアに隣接していて、とても便が良い。ボクは、ここのギフトショップの品揃えは、初めてストラスバーグ鉄道のギフトショップに足を踏み入れた時の衝撃に近いものを感じさせると思った。ストラスバーグより少し近く、ウィルミントンよりは少し遠いくらいの距離で、ワシントンからだと2時間少々で行ける。約230kmといったところだ。

 

ウェスタンメリーランド観光鉄道のウェブサイトはこちらから

ロッキーギャップ州立公園のウェブサイトはこちらから

 

(2003年7月31日)