アメリカ鉄道巡りL

ミドルタウン&ハンメルズタウン鉄道
Middletown & Hummelstown Railroad

 

 

 

 


場所:ペンシルベニア州ミドルタウン

 

アクセス:ワシントンからは車で約2時間30分。ペンシルベニア州州都ハリスバーグから車で10分ほどで、近くにはチョコレートで有名な企業城下町ハーシーがある。行き方は2通りあり、@インターステート270号線をメリーランド州フレデリックから州道15号線に入って北上し、ゲティスバーグを経てハリスバーグに至るか、Aインターステート95号線からボルチモア・ベルトウェイを経てインターステート83号線に入ってハリスバーグまで北上するか、いずれも大して距離は変わらない。

 

ペンシルベニアの州都ハリスバーグの隣町、ミドルタウンからハンメルズタウンまでを結ぶ貨物鉄道である。ハリスバーグからハーシーのテーマパーク「チョコレート・ワールド」に行く途中、ハンメルズタウンを通ることになるが、そこからミドルタウン通りを南下してミドルタウンに着く。ハリスバーグから行く場合にはこの鉄道の標識が出ているので迷うことはないが、ハーシーの帰りに行く場合には道を間違えやすいので要注意である。ボクたちはなんと2度も出口を間違えて、同じところで道に迷った。

 

ここの鉄道はもともとは木材の切り出しと輸送を目的とした貨物鉄道で、ハンメルズタウンあたりで切り出した木材を輸送して、サスケハンナ川に隣接するミドルタウンで中継して水上輸送でワシントン方面に運ぶのに利用された。ミドルタウン&ハンメルズタウン鉄道会社は1888年創業で、鉄道自体は1890年に敷設が完了し、以降1976年まではレディング鉄道の一部として活用された。それ以降は、再び独立路線として木材輸送と観光を目的として創業を継続している。ミドルタウンからハンメルズタウンに至る11マイルの路線は、「スワタラ・クリーク」と呼ばれる河川の辺を走る。残念ながらストラスバーグ鉄道の沿線の風景には劣るけれども、クリークで釣りを楽しむ人々を眺めながら1時間15分をかけて行なわれるのどかな観光列車の旅である。

 

牽引するのはディーゼルカーで、観光客が乗る車両は2両でいずれも外装は綺麗に整えられているものの、内装は非常に古い。1920年代に現役で活躍していた車両である。スナック類を購入できる売店やトイレもついていて、それなりに快適な乗車の旅を楽しむことはできる。なお、トレイン・ライドは、5月第2週から10月最終週の週末だけ開催され、7、8月には火、木も運行される。その他の月も日曜や土曜限定の特別イベントが開催されている。詳しくはウェブサイトでチェックして欲しい。

 

ボクたちが訪問したのは2003年4月13日のことだ。丁度4月の毎週末には「イースター・バニー特急」という特別イベントが開催されていて、乗車している間に、ウサギのぬいぐるみを被った鉄道関係者が、子供達に卵(中にチョコレートやキャンディーが入っている)を配るという粋な企画が行なわれていた。ウサギ自体はなかなかグロテスクで、大人が見るとちょっと悲しいものがあるが、子供達にとってはイースターに卵をプレゼントされることはハロウィーンのトリック・オア・トリートみたいなもので、普段は親から「甘いものばっかり食べてると虫歯になるよ」と警告されている子供達も、この日ばかりは無礼講で、ウサギから渡された卵の中味は、列車が駅に着く頃には全て空になっているのである。

 

ボクは、この鉄道はそれなりに頑張って集客努力を行なっているように見えるのだが、悲しいかな強大なライバルであるストラスバーグ鉄道が車で30分のところにあるため、ちょっと損をしているのではないかと思う。いろいろなイベントがあって地元の子供達にとってはきっと楽しい施設なのだろうが、うちの子供達を連れて2時間以上の運転をしてもう一度ここに来ようと考えるかというと、ちょっと辛い。まあ、ハーシーのついでに寄るということは考えられるだろう。チケット売り場の係員も、わざわざ東洋人がやって来たこと自体が相当驚きだったらしく、「この鉄道のことをどうやって調べたのか」とママに聞いていた。答えはウェブサイトなのだが、実は2002年12月に子供達をハーシーの「チョコレート・ワールド」に連れて行った時に、近くにこの鉄道があることをたまたま知ったのが始まりであった。

 

ミドルタウンの駅の構内には、お決まりのギフトショップがあって、列車の旅が終った子供達をさらに惹き付ける。これもまたお決まりであるが、機関車トーマスの木製玩具とレール模型が置かれている。子供達は木製の機関車をレールの上で走らせて暫く遊ぶのであるが、ふとここで気付いたことがある。我が家のみきお君は、ここで遊んでいる子供の中で最も大きい部類に入るようになったのである。間もなく6歳にならんとするみきお君は、もうオモチャの鉄道からは卒業する年齢に近付いてきたのではないかと思った。そして、時間だから帰ろうと言うと、「もっと遊びたいの!」と悪態をつく我が子を見るにつけ、もう鉄道からは卒業させねばならない年齢なのではないかとも思うようになった。ミドルタウンを後にして次の目的地に向かう道すがら、泣きわめく我が子に呆れつつ、ママと二人でもう鉄道に連れて来るのはやめようかとも話し合った。

 

ところで、ミドルタウンは実はある施設で有名である。その施設は治安上の配慮からアメリカで発行されている地図にも記載されていない。でも、ミドルタウンから州道283号線に上がってハリスバーグからサスケハンナ川の橋を渡る時にミドルタウン方面を振り返ると、その施設ははっきりと肉眼で確認することができる。何でしょう?―――答えは、「スリーマイル島原子力発電所」でした。そう、昔、何年かは忘れたけれども1970年代に一度火災事故を起こしたあの発電所です。今は、ブッシュ政権のエネルギー安全保障政策の一環で運転を再開しており、発電所からは白い煙が上がっている。

 

ミドルタウン&ハンメルズタウン鉄道のウェブサイトはこちらから

 

(2003年4月21日)