パパが飲んだビールシリーズ50
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ひとこと:
毎年3月17日は聖パトリック・デー(St. Patrick’s Day)というお祭である。アイルランドの国民的祝日であると同時に、世界各地のアイルランド系カトリック教徒が、アイルランドの守護聖人と言われる聖パトリックを偲ぶ日として知られている。アメリカでも、聖パトリック祭はかなり存在感のある行事で、3月ともなると、幼稚園の園児が工作の時間に製作する紙工作も、アイルランドに因んだシャムロック(シロツメグサ)の葉の形をあしらったものが多くなってくる。
波多野裕造「物語アイルランドの歴史」(中公新書)によると、聖パトリックは、5世紀初頭から中頃にかけてアイルランドのキリスト教化に尽力した伝道者の1人で、アイルランドから毒虫と蛇を追い払った聖人と言われているらしい。現在アイルランドに蛇がいないのはこのためだとされる伝説も残っている。
さて、この季節になると、ビアパブには突如として「グリーン・ビール」なるものが現れる。「グリーン・ビール」は、聖パトリック・デーの風物詩である。ぼくは、1989年3月中旬にアイオワ州チャールズシティを卒業旅行で訪れていた際、知人のロッティングハウス夫妻に連れられて入ったバーで、この奇怪なるビールを初めて目にした。もう14年も前のことなので、味など覚えていよう筈がない。でも、そのビールに似つかわしくない色だけは今でも鮮明に覚えている。
再びアメリカを訪れてみて、家族を驚かせるために「グリーン・ビール」が瓶詰めで売られていないかと2年間探してみたけれども、「ジャイアント」や「セーフウェイ」はおろか、「フレッシュ・フィールズ」あたりでも全く販売されていない。聖パトリック・デーを彩る超季節限定ビールということからすれば、「トータル・ワイン」でも入手は難しいだろうし、唯一可能性があるのは高級グルメスーパー「サットン・グルメ」程度ではないかと思っている。
もうひとつの可能性は、瓶詰めの市販はされていないのではないかということである。ぼくが過去唯一一度だけ飲んだ場所はビア・パブである。聖パトリック・デーの当日にビア・パブに行けば、ひょっとしたらそれがどこであったとしても「グリーン・ビール」にはお目にかかれるかもしれない。「グリーン・ビール」の製造元は1社に特定できない。今年の聖パトリック・デーはこれからなので、一度友人を誘ってパブに繰り出すのもいいかもしれない。
さて、1989年3月のアイオワの話に戻ると、さすがに中西部の厳寒地帯、3月も半ば過ぎだというのに気温は氷点下10℃を大きく下回っていた。しかも、これからシカゴ経由で東京に帰り、卒業式で学位記を総代で受け取ることになっていたにも関わらず、聖パトリック・デーの夜は吹雪に見舞われた。そんな中、ぼくはロッティングハウス夫妻にバーに連れて行かれたのだが、外は吹雪で無事彼らの自宅に帰ることができるかどうか不安で不安で、「グリーン・ビール」をゆっくり味わっている気持ちのゆとりなど全くなかった。おまけに、帰りがけに旦那のポールが、「そり遊びだ」と言ってわざと車をスリップさせたりするものだから、事故にでも遭ったら大変とハラハラさせられて軽い酔いも一気に吹っ飛んだ。今年のアメリカの冬はとりわけ寒さが厳しく、ワシントンに住んでいてもアイオワ並みの寒さを感じることが時々あった。雪の中をノーマル・タイヤで車を運転することも慣れっこになったが、あの時のポールのお遊びをここで自分がやる気にはどうしてもなれないでいる。
今日は、「パパが飲んだビール」シリーズ第50号を記念して、聖パトリック・デー特別バージョンをご紹介した。
(2003年3月6日)
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