これは知って得する

アメリカにおける葬儀

 

日本での葬儀は一般的に遺骨での葬儀、または遺影のみで葬儀が行われるが、アメリカでは遺体にての葬儀が主で、遺骨での葬儀は比較的少ない。葬儀も一般に公示して行うものと、家族のみで行う密葬とがある。アメリカで死亡広告を通じて一般に公示される「葬式」は、「visitation(公式訪問)」、「mass(葬儀ミサ)」、そして「burial(埋葬)」から構成されるようである。「visitation」の時刻は、一般的には夕方から夜であることが多い。

葬式は電話、または新聞の死亡広告で知らされる。地方の葬式であっても、最近は地方紙の「obituary(死亡広告)」をインターネットで検索することができ、そこで日程を確認することができる。友人や仕事上で付き合いのある人、またその家族が亡くなったという知らせを受けたら、何はともあれお悔やみの電話をすることが大切。「家族だけでの密葬にする」という断りがない限り、葬式にはできるだけ出席するようにしたい。

また、特別の断り書きがなければ、花を贈るのも大切なマナーである。花の送り先は、葬式の斎場、教会、または墓地で、普通、新聞の死亡広告に明示されている。カードに「With deepest sympathy」「Deepest sympathy from Koji and Misumi Yamada」などという言葉を添えるのが一般的である。なお、ユダヤ教、カトリックの葬儀の場合、花を贈る習慣がないので注意が必要。死亡通知の中に「Please omit flowers」とあった場合は花は贈るべきではない。また、花を贈る代わりに、故人の希望する使途で寄付を行なってほしいという記述が死亡通知に書かれている場合は、それに従うとよい。日本のような香典袋はアメリカにはないが、斎場の入り口で記帳をする際、斎場が封筒を準備していれば、それに個人小切手を切って同封し、斎場で家族に手渡す。

葬儀に参列する時の服装については、アメリカでは遺族以外の一般会葬者が喪服を着る習慣は最近ではほとんど見られない。地域によっても違うのかもしれないが、派手な色合いのもの、肌の露出度が高いもの、透けたり光る素材の服は、マナー違反と見られるので避けたほうがよい。アクセサリーや宝石類も控えめにし、華美にならないように気をつけよう。男性はダークスーツに黒のネクタイ、女性は地味な色合いのワンピース、スーツなどで、子供はよそゆきのおとなしいデザインの服が無難。最近は女性がパンツ姿で出席することも珍しくないが、伝統的にはマナー違反とされているらしい。ただ、自分が唯一経験した葬儀では、男性がジャケットオフで紺や紫、茶色といったカラーのワイシャツを着ているケースをかなり多く見かけた。服装については、極端にコードを逸する服装でなければ問題はないのではないかと思う。

お悔やみのカードについては、葬儀の場で家族に直接お悔やみを伝えたのであれば必要ないが、挨拶する機会がなかったり、リストに署名しただけで遺族と話さずに帰ったのであれば、後からカードを出しておくほうがよい。私は葬儀ミサの開始前に家族にカードを手渡していた人を目撃しており、おそらくは何らかの理由で出席できなかった場合に、出席する人に託したケースではないかと想像している。

カトリックの葬儀ミサは、最初に家族による故人との最後の対面があり、その後棺が閉じられ、ミサが始まる。黙とう、賛美歌の合唱、聖書朗読などの後、司祭による説教、葬儀委員長の挨拶が行なわれる。教会によっては、家族や友人らのスピーチが行われることもあるらしい。式全体は短時間で終了し、仏式に比べると祭儀的要素は少ない。

葬儀そのものの流れとしては、仏式、神式、キリスト教式とも大きな違いはない。初めての場合、どのようにしたらよいか戸惑うものだが、マナーに関しては周囲の人たちと同じようにしていればよいので、それほど心配する必要はないだろう。

ミサが終わると、若手の男性家族の手により棺桶を霊柩車に移動させ、続いて家族が礼拝堂から退場する。他の参列者はその後に続く。霊柩車は、白バイを先導に墓地に向かい、それに続く車列も信号に途絶えることなく、白バイの交通整理により一列で墓地に移動する。墓地では既に埋葬場所が掘られており、その上に棺桶を移して司祭の下で最後のお祈りをして埋葬式は終了。実際に土を埋める作業には家族も立ち会わないようである。

ミサと埋葬は、午前中で大体終了する。その後、家族の自宅にてパーティーのお誘いを受けたら、できるだけ参加しよう。

アメリカの葬儀は、決して悲しみを家族や知人と共有する場というより、むしろ故人の新たな旅立ちを祝福する儀式であるととらえられているようである。家族が悲しみの表情を見せるのは、葬儀ミサの冒頭棺桶の蓋が閉められる直前だけであり、その前後の応対は笑顔で行なわれる。葬儀終了後のホームパーティーでも悲しみの表情は殆どない。一度葬儀を経験してみて思ったことは、アメリカでは、何はともあれ葬儀に出席することが非常に大切であるということだ。

2003年2月24日)

*本稿は、アメリカでの葬儀について唯一日本語で記載されている「南カリフォルニア日系企業協会(JBA)」のウェブサイトの記述(http://www.jba.org/jp/jbanews/living_ca/9.html)をもとに、自分の経験も踏まえて加筆修正をしたものです。自分がアメリカでの葬儀に立ち会うに当って、何をどうしたらいいのか本当に困りました。その時、このウェブサイトはかなり参考になりました。