アメリカ鉄道巡りJ

ブランズウィック鉄道博物館
Brunswick Railroad Museum

 

 

 

 


場所:メリーランド州ブランズウィック

アクセス:アーリントンからは車で1時間30分弱

 

2003年3月7日撮影》

 

ブランズウィックは、メリーランド州フレデリックの南西、ポトマック河畔の小さな町である。この町には、ポトマック河にかかる鉄橋が架かっており、バージニア州のリーズバーグまでも30分程度で行くことができる。アーリントンから訪れるにはさほど遠くない町である。

 

ブランズウィックは、元々バーリン(ベルリン)という名の町だった。1886年、ボルチモア&オハイオ鉄道が、この地に大規模な操車場兼車庫を建設したのが始まりで、南北戦争直後の人口が僅か500人足らずだったこの町も、1910年頃には既に5000人程度にまで達していたらしい。そして、その人口の殆どが、鉄道駅と何らか関連の仕事をしている。ブランズウィック駅の開業は1891年のことである。

 

ぼくたちは、ブランズウィック駅で開催された鉄道フェスティバルをお目当てに、2001年10月に家族で出かけたことがある。10月最初の日曜日に開催されるお祭では、駅構内がイベント会場となり、ブランズウィック〜マーティンズバーグ(ウェスト・バージニア州)を往復するトレイン・ライドが大きな目玉となっている。広告には蒸気機関車のイラストが描かれていたので、てっきり蒸気機関車が客車を引っ張るのかと期待して出かけたのだが、走ったのはメリーランド長距離通勤鉄道(MARC)のディーゼル列車で、期待を裏切られた樹生くんが大いにすねてパパ&ママを困らせたことが今となってはよい思い出となっている。

 

樹生くんのご機嫌を取るために追加で訪れたのが、ブランズウィック鉄道博物館である。駅から1ブロック離れた町の中心街の3階建てビルに入っており、1階はギフトショップ、2階はブランズウィックの鉄道員の歴史資料館、そして3階はミニチュア・トレインの模型セットの展示スペースとなっている。

 

ここの目玉はなんといってもHOスケールのミニチュア・トレインである。この博物館のミニチュア・トレインの展示は、アメリカ東海岸屈指の規模を誇っている。なんと、ワシントン・ユニオン駅からブランズウィック駅までの各停車駅の町並みを模型で再現し、その区間をミニチュア・トレインが走るという仕組みである。途中の壁に幾つかボタンが設置されており、押すと牛の鳴き声や、車掌さんの車内放送など、様々な工夫をがこらされている。そのスケールの大きさを数字の上でご紹介すると、

l        ボルチモア&オハイオ ディーゼル機関車 58台

l        ボルチモア&オハイオ以外のディーゼル機関車 19台

l        蒸気機関車 20台

l        客車 138台

l        貨車 500台以上

l        乗務員車(カブース) 34台

l        レール・ディーゼル 4台

 

これに匹敵する展示は、ペンシルベニア州ストラスバーグの「The Choo Choo Barn」にしかない。当然子供には大受けで、2003年3月に再訪した時も樹生くんはかぶりつきでミニチュア・トレインの操作を行なっていた。博物館1階で入場料を払うと、ボランティアのおばさまが1階から2階に上がる階段に随行してくれて、簡単な概要(各階に何があるか、毎年いつ頃どのようなイベントが開催されているか)を説明してくれる。こぼれ話になるが、2001年に初めてこの博物館を訪れた時、樹生くんは階段の2階の踊り場に置かれているインディアンの巨像が相当に怖かったらしく、2003年に再び来た時もしっかりとその時の嫌な記憶を覚えていて、1階と3階との階段上り下りは、パパ同伴でないと動けなかった。樹生くんもまだまだ子供だ。

 

しかし、いったん3階に上がってしまうと、もうそこは子供達の夢の世界で、特に2度目の訪問は金曜日で空いていたこともあり、樹生くんはワシントン・ユニオン駅前のコントロール・パネルで、列車を何台か走らせて、かなりの時間を過ごした。目がキラキラ輝いており、樹生くんは本当に鉄道が好きなのだなと感心させられることが多い。帰宅してからもずっとご機嫌だった。

 

ここの模型製作は、1973年に始まり、約15年前に今の形で収まったらしい。通常、この種のミニチュア・トレインは、ご当地のモデル・トレイン愛好会が、人海戦術で短期間に製作することが多いのだが、ブランズウィックでは、ピート・ハーパー氏とリー・スミス氏の手によって時間をかけて整備が行なわれたらしい。

 

ブランズウィックでは、なかなか味のある独自のイベントの企画も行なわれている。例えば、「歴史の歩道(Brunswick History Walk)」という企画である。寄付者から寄せられた三行構成のメッセージをレンガに掘り込み、それを同市の目抜き通りの歩道のレンガ張替え時にどんどん使っていこうというものだ。アメリカの田舎道の歩道に、自分の名を刻むなんて、なかなか痛快ではないか。ぼくも、次世代の樹生くんへの置き土産として、1つ作ってみようかと思っている。何年先になるかわからないが、樹生くんがこの町の鉄道博物館を訪ねたことを思い出して、そしてこのウェブサイトを見る機会があったら、是非この採算割れを度外視した記念レンガの製作を目的として、パパがやったことを知り、そしてまた自分の手でいつの日かブランズウィックを訪ねて欲しいものだ。レンガ探しは、一種宝探しのゲームみたいなものだ。

 

今回のコラムは、我が子にいずれ読んでもらいたいと期待しつつ書いてみた。いつかまた訪ねることができたら、自分が怖がったインディアンの人形、夢中になったミニチュア・トレインの操作パネル、そして自分の名が彫られた歩道のレンガを思い出して欲しい。

 

 

《うわわ、ぶつかるよ〜!》

 

ブランズウィック博物館のウェブサイトはこちらから

 

(2003年3月8日)