理想の酒を求めて(日本編) (3)
醸造地:ブリュッセル(ベルギー)
日本で飲める商品:Kriek
《写真:Belle-Vue Gueuze》
ひとこと:
ベルギーにはいろいろな種類のビールがある。種類が多いは、どれも旨いは、ビール党にはたまらない国だ。でも、ピルズナービールに慣れた我が国のビール党諸氏には、ベルギーのビールはどれも少なくとも最初の一口は「あれ?」と思わせるものが多い。
ブリュッセル周辺が産地である「ランビック」というビールは、とりわけ面白い。始めの一口がやたらと酸っぱいのである。このビール、人為的に酵母を加えるのではなく、空気中を浮遊している微生物を利用した天然発酵のビールなのだ。ブリュッセルのグラン・パレに面したビール博物館でビデオを見たら、ランビック・ビールの醸造所では、空気中の微生物を取り込むために、糖化を終えた麦汁にホップを加えた後、なんと醸造所の窓を開け放つのだ。
当然、天然酵母を使った天然発酵だから、貯蔵している間にどんどん味も変わる。同じ製造年のビールでも、夏を越すたびに味が変わっていくのだ。どんどん酸っぱくなる。そこで、味を一定に保つために、古いビールと新しいビールをブレンドするのである。ブレンドしたランビックを瓶詰めし、密栓して瓶熟成したものが「グーズ(Gueuze)」と呼ばれる。まるでワインのようなビールだ。あまり泡立たないビールで、グラスに注ぐと、きめ細かな泡がわきあがり、そしてすぐに消えていく。
ワインといえば、この酸っぱいグーズ・ランビックに半年ほど果物を漬け込み、半年ほど発酵させて果物の風味と香りと色を抽出したフルーツビールもある。サクランボを漬けたものが特に有名で、「クリーク(Kriek)」と呼ばれている。ワシントンに駐在している時、リンデマンズ(Lindemans)社のフランボワーズ・ランビックを飲んだことがある。マクレインの「サットン・グルメ」でビールと同じ棚に置かれていたのでビールだと思って飲んでみて、ちょっと癖のある果実酒という感じで、「こりゃビールじゃないな」と思って二度と飲まなかったことがあった。ところがどっこい、これもれっきとしたビールで、フランボワーズは木イチゴを漬け込んだランビック・ビールなのだ。
そこで今回紹介するベル・ビューというランビック・ビール、あの多国籍企業インターブリュー社のグローバルマーケティング戦略の一翼を担い、ワシントンでも東京でも飲むことができる。但し、クリークに関してのみだ。グーズはやっぱり癖があり過ぎてどうも売れないらしく、東京では入手ができない。
ボクは6月に出張でブリュッセルに立ち寄る機会があったので、クリーク、グーズともにしっかりと賞味させていただきました。ホント癖のあるビールだが、不思議なことに二口目、三口目と飲むごとに徐々に酸っぱさが甘さに変わってくるのである。とても面白いビールだと思う。
(2004年6月24日)