JICAへの提言:個別案件における無理のない世銀との連携(私案)

 

山田浩司

はじめに

このメモは、私が2002年から2003年にかけてJICAに提出した業務報告書のうち、個別案件における連携だけに焦点を絞り、どのように世銀にアプローチすれば世銀とJICAのバイラテラルな連携が進むのかについて記述した部分を抜粋して1つのペーパーとしてまとめたものである。

双方のプロジェクトサイクルに従うならば、個別案件といった場合想定されるのは次のような連携パターンである。

@   世銀貸付プロジェクトの発掘段階:合同でプロジェクト発掘調査を実施したり、世銀国別援助戦略(CAS)の策定プロセスでの対話を通じて、相互補完的に両者が今後何に取り組むのかを合意する。

A   世銀貸付プロジェクトの準備段階:川上のプロジェクト準備をJICAが開発調査やその他の技術協力プログラムで実施して、川下でのプロジェクト実施を世銀のファンディングで行なう。或は、川上のプロジェクト準備を世銀のグラントで実施する過程で、川下での世銀と日本の協調融資によるファンディングを計画する。

B   世銀貸付プロジェクトの実施段階:貸付プロジェクトの技術援助のコンポーネントをJICAが無償で実施する、或はそこまでプロジェクトドキュメントで明文化されていなくても、世銀のプロジェクトを実施する受益国政府スタッフに対してJICAが技術協力や政策助言をして彼らのキャパシティを高める。

また、これらに限らず、セミナーやワークショップ、スタディツアー、世銀プロジェクト終了時に合同評価を実施するといった単発のイベントレベルでも勿論連携は考えられる。

 なお、ここではあえて世銀側のプロジェクトサイクルに従って段階分けを行なっている。昨今途上国の現場で進行している貧困削減戦略ペーパー(PRSP)策定プロセスやセクターワイドアプローチといったものは、マルチドナーにさらに途上国内の様々なアクターが参加するものであって、世銀とJICAのバイラテラルな関係とは次元が違うと考えるからである。世銀とバイラテラルな付き合いを志向するならば、世銀のプロジェクトサイクルにある程度は則して物事を考えてゆくことも必要である。

 

こちらから仕掛ける姿勢が大切

世銀にいて「JICAと連携したいんだけれど」と相談を受けるケースは少なくない。しかし、大抵の場合はうまく行かない。その原因は、世銀側から「JICAと連携したい」言い出した時点で既にJICAとスケジュールが合わないという点にある。

JICAの援助実施スケジュールを理解した上で世銀職員がそのような声をあげ、JICAに無理なスケジュールを期待していない場合は、比較的連携はうまく行く。しかし、世銀職員が何かやりたいと言ったら実施予定時期が3ヶ月〜6ヶ月先であるケースが殆どで、8月末〆の要望調査で採択案件実施が早くても翌年4月以降というJICAの技術協力とは、根本的にスピードが違い過ぎ、そのために連携協議を進められなかったという事例が多いのである。世銀職員の間に、JICAの援助実施スケジュールを普及させることは勿論重要であるが、実行までに時間がかかる貸出プロジェクトはともかく、信託基金やグラントファシリティを活用したグラントプロジェクトの場合は、コンセプトが持ち上がってから実施までに1年を要しないものが殆どであり、世銀職員がJICAのスケジュールを理解したからといって連携がスムーズに行くわけではないと思う。

無理のない連携実現には、JICA側から「世銀と連携したいんだけれど」と言い出すこと、つまり世銀側が何もしていないうちにJICA側が世銀と連携して何がやりたいかを明確にして、実施までのシナリオを予め作り、世銀に持ち込むことだと思う。そのためには、世銀のプログラムへの理解を深めるのは勿論のことながら、現地レベルでの世銀事務所との接触回数を増やすことが必要である。ドナー会議への出席を言うのではなく、最初から世銀のファンディング狙いで世銀事務所にマーケティングをかけることが必要なのである。そのためには、世銀CASとJICAの国別事業実施計画で、双方の当該途上国の開発課題の認識で、どこが共通していてどこが違っているかを、双方が理解しておく必要がある。

JICA側から持ちかけた連携案件が比較的成功するのは、ナレッジシェアリング型連携の場合も同様である。世銀が2001年前半に実施した「Learning Across Borders」ワークショップ4回シリーズは、各回のワークショップが終了する毎に次のワークショップの内容を考え、しかも実施までに1ヶ月弱しかなかったため、JICAに講師の出席をお願いするタイミングがぎりぎりになるなど多大なご迷惑をかけた。逆に、技術協力の有効性に関するシンポジウムを2003年1月にWBI(世界銀行研究所)、UNDP(国連開発計画)、CIDA(カナダ国際援助庁)と共催したケースでは、JICA側から仕掛けているので上手くいったように見える。

 

PHRD技術援助グラントとは

開発政策・人材育成基金(PHRD)は、受益国政府または政府機関が、世銀貸出によるプロジェクトやプログラムを準備し実施することを支援するために、日本政府が出資して開設された信託基金である。その中で最大のプログラム・コンポーネントを成すのは、世銀貸出によるプロジェクトやプログラムの実施を円滑に行なうための案件フィージビリティ調査や、詳細設計、実施体制整備を目的としたキャパシティビルディング(プロジェクト目標と活動内容を共有するためのワークショップも含まれる)等の活動に活用される技術援助グラントプログラムである。

世銀CAS策定プロセスにおいて、世銀と受益国政府は貸出案件の発掘に係るコンサルテーションを既に終えているため、技術援助グラントの案件発掘への活用は認められていない。案件発掘は世銀側の活動と見なされ、PHRDのコンポーネントの1つである日本コンサルタント信託基金(JCTF)でファンディングしようと思えばできる。

JICA事業と対比させてみると、技術援助グラントは、開発調査、無償資金協力の基本設計・詳細設計調査、技協における事前調査等、案件の準備段階の調査全般に加え、案件実施段階におけるプロジェクト監理(無償資金協力における本邦コンサルタントに相当)、技術協力本体の活動(JICA専門家による技術指導に相当)等もカバーしている。その一方で、要望調査締切からグラント実施まで通常1年を要しないことや、プロジェクト準備に要する時間もJICAと比べて短いこと等が特徴である。

JICAと比較して時間的枠組が短期であり、現地リソースの動員とそのノウハウの共有を図ることが中心で、JICAの技協がこれまで中心としてきた「日本の技術ノウハウの移転」とは異なる性格を持つ。技術援助グラントとは、相手国政府が世銀貸出案件の準備や実施を円滑に行なうのに能力を高めるのに必要な技術的助言や、調査分析・評価作業等の技術サービスを受けるための資金援助と考えると理解しやすい。JICAの技協とは違い、世銀自体が技術ノウハウを相手国政府に移転するわけではない。また、PHRD技術援助グラントでは、スタディツアーや、海外での技術研修、パイロット事業の実施、車両購入、受益国側の職員傭上、世銀職員給与、旅費等はカバーされない。

日本のODAの二国間グラント(無償資金協力と技術協力)と同様、技術援助グラントは、受益国政府の要請書ないしは両者間で交わしたAide Memoireが必要である。これらは、世銀職員が作成する案件プロポーザルに添付され、受益国側のオーナーシップを確認する文書として活用される。

案件プロポーザル作成は、世銀各地域局(各カントリーオフィスを含む)毎に取りまとめられ、各地域局の協調融資担当コーディネーターを通じて信託基金業務部(TFO)のPHRDユニットに提出される。PHRDユニットは、各プロポーザルの内容精査の上、約2週間後に日本理事室を通じて財務省にプロポーザルを一括提出する。日本政府への提出期限が年に3回設定されており、11月、2月、6月頃になることが多い。

PHRD技術援助グラントでは、将来日本の援助機関との協調融資(co-financing)に繋がる可能性の高い案件を推奨している一方で、財務省側で案件審査を行なう際、外務省やJICAからコメント聴取するのに一週間程度の時間的猶予しか与えておらず、PHRDが供与するプロジェクト準備資金が日本の技協や無償資金協力と世銀貸出プロジェクトとの連携に繋がったケースは殆どない。JICA地域部の国担当職員や在外事務所員にとっては、プロポーザルへのコメント依頼があった時点で初めて同案件の存在を知るケースが多く、当該国の国別事業実施計画と比較してPHRDを補完する技協を検討するところまでなかなか繋がらないのが現状である。だからこそ、JICA側から先に仕掛ける姿勢が大切だと思う。

 

PHRD技術援助グラントとJICAの技術協力の間の調整をいかに図るか

世銀で勤務していて時折目に付くのは、PHRD技術援助グラントで世銀が行なったマスタープランが、JICAの派遣専門家や開発調査の意向を反映していないという指摘をJICAの在外事務所から受けるケースである。「世銀が雇ったコンサルタントが日本(或は現地ドナーコミュニティ)の言うことを聞かないからワシントンで調整してほしい」というタイプの要請が、JICA米国事務所には度々寄せられている。

そこで気付くことは、JICA職員の多くが、PHRDのグラントで行なわれる技術援助プロジェクトは世銀のタスク・マネージャーによってコントロールされていると誤解しているのではないかという点である。既述の通り、PHRD技術援助グラントは、世銀の貸付プロジェクトの準備を途上国政府が行なうのに必要な、コンサルタント傭上やPCMワークショップ開催といった活動をファイナンスするための無償資金の援助であり、グラントを受け取った途上国政府が、それによってどのようなコンサルタントを傭上するのかは、ひとえに途上国政府にかかっている(但し調達は世銀ガイドラインに沿って行なわれる)。世銀がコンサルタントを選定して、その業務内容を逐一コントロールしているが如き指摘は適切ではない。

世銀の貸付プロジェクトの準備はあくまでも途上国政府の責任であり、途上国政府がまとめたプロジェクトドキュメントを評価し、理事会提出書類をまとめるところが世銀の作業となる。このため、在外事務所から受ける指摘の多くは、先ず相手国政府に対して向けられる必要がある。

開発調査とPHRDグラントによるプロジェクト準備が並行して進められている事例を時折目にするが、世銀にいて疑問なのは、そもそも同じ性格の調査がなぜ並存するのかという点である。どちらが先行していたのかは案件によって異なるだろうが、JICAが要請案件の検討を行なう際、少なくとも世銀ではいかなる貸付プロジェクトがパイプラインに乗っており、PHRDグラントを用いたプロジェクト準備が行なわれる可能性が高いかを、予め確認しておく必要があると思う。重複しているなら、JICAはスコープを変にいじった歪な開発調査などやらない方がよく、むしろ専門家を短期派遣して日本の知見をプロジェクト準備に反映させ、包括的なマスタープランを作る方が費用対効果が高い。逆に、事前に世銀側タスク・マネージャーと調整が付けば、世銀の貸付プロジェクトの準備をJICAの開発調査で行ない、PHRDグラント供与を手控えさせることもできる。

PHRDグラントが受益国による管理下にあるということは、JICAの専門家が同じ省庁に配属されていれば、JICA専門家が配属先の内部からPHRDによる技術援助の品質をコントロールすることも可能であるということを意味する。JICAの派遣専門家は、世銀のプロジェクトとJICAのプロジェクトを全く別個に分けて捉える傾向があるが、世銀のタスクチームは外から案件を監理するしかないのに対して、JICAは内から案件を監理することができるというアドバンテージがある。特に、政策助言型専門家には、自分が助言した政策により大きな効果を持たせる意味で、PHRDによる世銀プロジェクト準備には深く関与していただきたい。

また、受益国側のプロジェクト準備の責任者(世銀のカウンターパート)を、短期間の個別研修で本邦に招聘するとよい。こうした形で得た日本での知見が、その後の世銀貸出プロジェクトの設計に生かされれば、個別本邦研修のような少ない投入であっても、それが世銀貸出という形態でセクター全体にレバレッジ効果をもたらしたと説明することができる。因みにPHRDだけではなくいずれの信託基金もこうした国外研修をファイナンスできないので、「アジアの経験をアフリカで」という際に、日本の南南協力プログラムは世銀に対して強力な「売り」になる。

 

JICA独立行政法人化とこれからの世銀の関係

JICAは、2003年10月に独立行政法人化が予定されている。独立行政法人化に合わせて、現在JICAでは様々な改革が予定されている。以下では、独立行政法人化して初めてできることだけではなく、同時平行的にJICAで進められている業務改革を通じて、世銀とのバイラテラルな関係がいかに変化することが見込まれるかを簡単にまとめてみたものである。

第一に、これは一般論であるが、成果重視型のフレキシブルな投入が可能になるので、現地レベルでの世銀とバイラテラルな連携を進めることが容易になるだろう。国別のワークショップのようなイベントものへの参加や、現地のコンサルタントを活用した簡易な調査を以って世銀のプロジェクト準備に関与することも、これまで以上に迅速に意思決定がなされるようになるだろう。また、このスピード感そのものが、今後のJICAと世銀の個別案件レベルでの連携に明るい光をもたらしてくれるものと楽しみにしている。

第二に、JICA自身が世銀から業務を受注できるようになる。JCTFを活用した経済セクター調査(ESW)や、地球環境ファシリティ(GEF)、Cities Alliance信託基金、ポストコンフリクト基金、貧困削減戦略信託基金(PRSP基金)等といった世銀管理型(Bank-Administered)信託基金からグラントを受けて事業を実施することができる。現にGTZ(ドイツ技術協力公社)はそうした事業を展開している。JCTFはコンサルティングサービスの調達手続がワシントンで行なわれるので、米国事務所がマーケティング活動を行なうことができる。世銀の貸付プロジェクトの技協コンポーネントでも、途上国政府から業務を受注して技協を行なうことも不可能ではないが、その場合は事業受託よりも技協コンポーネントをJICAのグラントとして協調融資扱いとすることを途上国は望むだろう。従って、当面は世銀管理型信託基金からグラントを受ける機会をどう生かすかを検討すべきである。

JICAの派遣専門家は、省庁配属されている強味を活かして、これらのファンドの活用を考えたり、技術援助の実施に関与したりできる立場にある。また、現地の事業組織(NGOや住民組織、民間企業、コンサルタント等)に働きかけてマルチドナーファンドを活用したプロジェクトの申請を促したり、その活動を指導監督したりもできる。世銀のプログラムを予め理解した上で仕掛ければ、JICAの現地業務費でできる以上に活動の幅を広げることができる。受益国実施型グラントの場合は配属先がグラント資金の受け手になっているので問題ないが、世銀(或は第三者)管理型グラントの場合は、専門家個人が資金の受け手になることができない。その場合は、JICAの現地事務所がグラントの受け手として受け皿を提供するという選択肢もあり得る。

第三に、「国際協力人材センター」である。世銀でJCTFを活用する際、タスク・マネージャーが日本人コンサルタントを殆ど知らないという点がJCTFの執行率低迷の大きな原因になっている。一般的に日系コンサルティング企業はインフラに強いと言われているが、世銀が社会セクターに重点を置くようになって、明らかに需給ギャップが目立ってきた。JICAの「国際協力人材センター」は、このようなセクターでも活動経験のある人材がデータベースに登録されており、そのデータの分量はおそらく日本最大であろう。このデータベースが対世銀でのJICAのセールスポイントになるのではないか。資金的には、コンサルタントの短期傭上であればJCTFから全額支給されるし、スタッフの長期傭上であれば、スタッフ基金から上限50%まで支給される。JICAとしては、単純に人材の育成と斡旋に徹するという考え方もあるだろうし、戦略的に世銀に人材の派遣を仕掛けてゆき、日本の経験と知識、考えが世銀の政策形成に反映されるよう目指すこともできる。逆に、世銀で頻繁に傭上されている日本人コンサルタントをJICAのデータベースで補足することも必要である。

日本の援助人材の育成が喫緊の課題だと言われて久しいが、国際機関である世銀が日本人の人材育成だけに便宜を図ることは難しい。単に人材の斡旋のみならず、人材の育成面についてもJICAは世銀に対してそのイニシアチブをアピールすべきである。

人材に焦点を当ててさらに付け加えると、第四には長期の人事交流である。例えば、フィンランド政府は出向職員の人件費を全額負担してでも、自国の経験やノウハウを援助政策に反映させたいと考える世銀セクターユニットに専門家を送り込もうとしている。繰り返しになるが、日本のスタッフ信託基金の場合は上限50%で残りのファンディングをいずこからか探してくる必要があるが、日本として戦略的に情報収集やアイデアのインプットを行ないたいと考えている部局に、JICA専門家ないしは職員を送り込んではどうかと思う。また、逆に世銀のシニア職員を客員専門員扱いでJICAで受け入れ、国際会議などでJICAの立場から発言をしてもらったり、JICAプロジェクトの準備や実施にあたって助言を得たりすることを通じて、双方の職員の知識と経験の交換ができる。よく日本では「顔の見える援助」という言葉を耳にするが、「顔」が見えることととは、必ずしも日本人が国際場裏で重要な役割を担うことを必ずしも意味しないと思う。代弁してくれるのは外国人であってもよい。大切なのは、国民の血税から捻出された貴重なODA資金が本当に効率的に活用されているかどうかということであって、そのためには言わねばならぬことを話し上手な外国人に言ってもらうことも1つの手である。

第五に、JICAは世銀に対して、その強力な国内ネットワークの存在をアピールすべきである。JICAの国内の研修センターは、単に途上国から来た研修生が技術研修を受ける拠点となるだけではない。その周辺地域への情報発信、開発教育の拠点でもあり、途上国の研修生は、センター周辺の学校、住民組織、地方自治体、民間企業等との交流を通じて、貧困・開発問題に対する日本人の関心を高めるとともに、自らも日本シンパとなって途上国での日本のODAのオペレーションの円滑な実施に貢献してくれるよう期待されている。このような「心のこもった」技術協力は、世銀にはできない。WBI(世銀研究所)のキャパシティ・ビルディングが、いかに最先端の情報関連技術を駆使して最先端の技術・情報・知識・アイデアの共有に貢献しようとも、効率だけが優先されるプログラム編成からは暖かさまでは伝わらない。世銀がマルチ・ステークホルダー参加型の貧困削減計画を提唱するにつれて、住民参加の実践事例を途上国の政策担当者やオピニオン・リーダー、マスコミ関係者等に紹介するタイプの研修もニーズが高まるであろう。当該途上国国外の実践事例を紹介するこのようなタイプの研修を日本に誘致するならば、JICAの国内ネットワークを通じて比較的迅速に編成することができる筈である。世銀には途上国の貧困削減戦略策定とモニタリング評価のためのキャパシティ・ビルディングの実施を支援するため、貧困削減戦略信託基金(PRSP基金)というファンドがあるが、先述のPHRD同様、国外の事例に触れるためのスタディ・ツアー的研修の実施はカバーされていない。その点では、JICAの国内研修はPRSP基金グラントを通じた活動を補完強化することができる。そういう売り込み方を、現地レベルで行なうべきである。

JICAがさらに進んで特定公益増進法人格を取得したらという前提の話であるが、日本国内の民間資金を、JICAの国内ネットワークを通じて、募金・寄付金という形態で開発協力活動に動員できるようになれば、世銀社会開発局をハブとしたCommunity-Driven Development(CDD)グループや財団ワーキンググループにとってはなくてはならない日本の重要なパートナーとしてJICAが認識されるだろう。日本の財団やNGOは特にアメリカの財団・NPO等と比べて規模が極めて小さく、世銀にとって重要なパートナーというところまでは認識もされていない。当面は、世銀がアメリカのCouncil of Foundations(COF)と共同で展開している「途上国におけるコミュニティ財団パイロット事業」について、その進捗状況を情報普及してゆく以外、日本の財団との付き合い方は当面はない。しかし、仮にJICAがこのような日本の民間資金の動員に大きな役割を果たすということが十分認識されてこれば、単に日本国内での情報普及の相手としてだけではなく、途上国においてコミュニティ財団のチャンネルを活用してくれる貴重なドナーとして、大きな期待が寄せられるであろう。

 

最後に

 以上述べてきたことは、あくまで山田個人の意見であり、世銀、JICA双方を代表したものではない。

 

(2003年4月29日)